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Q.人事異動により、システム開発部門からスタッフ部門に配置転換になりました。職種がシステムエンジニア(SE)という技術職から事務職に変わり、給与が減ります。給与の減額は毎月続き、労働基準法第91条にある減給の上限を超えるので法令違反になるのではないでしょうか。異動自体にも納得していません。

 配置転換により職種が変わることはよくあります。SEから営業や事務職への配置転換というような異動です。IT企業に勤める読者の中には、自らが異動経験者だ、あるいは異動した同僚を見てきたということはないでしょうか。

減給は労働基準法違反なのか

 労働基準法第91条には「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」とあります。質問者は、毎月減給となることで、制裁の減給以上に労働条件が悪くなることから法令違反ではないかと考えているようです。

 残念ながら今回は職種変更に伴う賃金改定であり、制裁による減給とは異なります。質問者の会社は、職種の違いによる賃金制度を取り入れているIT企業だと思います。制度として明文化されている場合、今回の減給に問題はないといえます。賃金制度をあらかじめ周知していることが前提です。

 もう1つの「異動に納得していない」という主張について述べます。人事異動を発令する権限は会社にあり、そのことは就業規則に記載されています。社員はその規定に従い、異動命令を受け入れる必要があります。

 ただし、就業規則や労働契約書に職種限定の記載がある場合には、その対象となる社員に異動を命じることはできません。職種を限定することを約束しているので当然です。

 質問者は職種限定の社員ではありません。業務上必要な異動命令には従わなければなりません。

職種変更は職務変更なので賃金改定が起こる

 質問のケースは職種変更によるものであり、職務(ジョブ)が変わったことが明白です。昔からよくあるケースといえます。異動自体に納得がいかなくても、職種変更による賃金改定には納得感があるのではないでしょうか。技術職と事務職の職務給は異なるということです。

 同じ技術職の中でも、職務給の1つである役割給制度では賃金改定が起こります。簡単に説明すると、役割の大きさに対して給与(役割給)を決めます。それから役割の大きさを区分けして、そのグレード(資格)別に、あらかじめ決めている賃金を支払います。

 例えば、部長の部下が20人だとします。別の部長の部下が50人いた場合、後者のほうが役割や責任範囲が大きくなります。役割のグレードが高くなり、役割給も上がります。

 部長だから課長より役割給が高いとは限りません。現場でプロジェクトチームを指揮監督するプロジェクトリーダーである課長がいるとします。この課長が、直属の部下や他部門からの応援社員、協力会社の要員も含めて30人を指揮監督しているとしましょう。一方、部長の仕事は、部門運営や予算管理の業務が中心であり20人の部下がいるとします。この場合、課長のグレードが部長よりも上位となることがあります。部長や課長などの役職名とグレードは一致せず、役割給は逆転することもあり得ます。

 役割給制度では役割の変動があるので、定期的にグレードを見直します。筆者の知る限り、大手IT企業が導入した役割給制度は管理職が対象であり、一般社員には適用されていませんでした。