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Q.IT企業に勤めるエンジニアです。課長のシステムエンジニア(SE)から「単純なミスによる後戻り作業が多く、要領が悪い」とよく叱られます。残業すると「そのような時間は残業ではない」と遠まわしに言います。事前の残業許可申請で1.5時間と書いても、1時間で済むだろうと言われ、1時間にカットされてしまいます。結局、1.5時間かかっています。本来頼るべき部長は、課長と仲が良いので、相談する気になりません。労働基準監督署への通報で調査してもらえるのでしょうか。誰が申し立てしたのか、課長に分かってしまうものなのでしょうか。

 会社員に支払われる給与は、原則、労働時間に対して給与を支払う法律体系となっています。例えば月給でも、労働時間で割った金額が最低賃金を下回れば、会社は最低賃金法違反に問われます。

 会社は労働基準法や労働契約法に基づき、就業規則や労働契約書に所定の労働時間を記載しなければなりません。残業手当や遅刻欠勤減額は1時間当たりの単価を基に計算します。

 質問のケースは、サービス残業の強制です。残業時間をカットする悪行は明らかな労働基準法違反です。

会社に言えばすぐに対応するはず

 良識ある会社は、コンプライアンス違反に敏感です。会社がこの事実を知れば、すぐに是正され関係上司におとがめがあるはずです。

 質問者の上司である課長エンジニアは、自分流の間違ったローカルルールでこの悪行をしているのでしょう。「会社は関係ない、職場のルールは俺が決める」というパワハラ発言をする上司がいます。課長は同じような思考を持っている人物だと思います。

 会社は、現場で起こっている法令違反や、その疑いがある職場のトラブルをすべて把握しているわけではありません。知っていればすぐに対応できたというものも多いです。臆することなく、会社に訴えてよい事案です。

 質問者は課長と仲が良い部長への相談をためらっており、後で不利益を被らないかという心配をしています。現場でパワーを持っている課長に関する話なので、後のことを心配するのは当然です。会社がこの件を知れば、課長は嫌がらせのような行動はもう取れないはずです。

 多くの大企業では相談窓口となるホットラインを用意しています。人事部門やコンプライアンス委員会、社内の通報窓口に通報すれば、会社はすぐに対応するはずです。

 そうならないとき、あるいは初めから会社に言うのは嫌だという場合は、労働基準監督署に駆け込むことができます。いずれにせよ、今の状態のままではいけません。ストレスで健康を害してしまいます。

労働基準監督署への通報者は分からない

 労働基準監督署の調査には、大別すると定期監督と申告監督があります。定期監督はその名の通り、定期的に実施されるものです。秋は実施の多い季節です。昔は「労働時間適正化キャンペーン」、最近は「過重労働解消キャンペーン」と銘打って実施されています。申告監督は、社員からの相談や通報により、法律違反の疑いがあるときに行われます。

 筆者は労働基準監督署の調査にたくさん立ち会ってきました。以下は筆者の経験に基づく記述ですが、筆者の知らないパターンもあるかもしれません。その点をご承知おきください。

 筆者が立ち会ってきた調査の中には、社員の通報による申告監督による調査もあったと推測しています。会社側からは、それが定期監督なのか申告監督なのかは分かりません。

 会社と社員間でトラブルになっているタイミングでの調査だった場合、申告監督ではないかと臆測できるかもしれません。それでも、断定できるものではありません。調査はその事業所全体を対象とするからです。

 質問者の姓が「杉本」だとします。「杉本さんの勤務表、タイムカードやICカードによる入退場記録を見せてください」というように、特定できるような個別調査の方式ではありません。