Q.IT企業に勤めています。同じ職場だった妻は、別の業界に転職しました。妻の転職先は、子供の扶養手当が1人につき2万円支給されます。このビッグな扶養手当が欲しいので、子供を妻の扶養にする申請をしたのです。ところが、扶養手当については不支給となるとのことです。私のほうが妻より50万円ほど年間収入が多かったからです。「配偶者の年間収入のほうが多い場合は扶養手当を支給しない」ということでした。妻もうっかりしていたようです。子供の扶養は、どちら側でも選択できるが、今のままでよいのではとアドバイスされたようです。扶養者のことまで言われる筋合いはないと思います。
子供1人につき2万円の支給は、魅力ある金額です。子供の扶養手当をこの水準で支給している会社は少ないと思います。妻の会社側の扶養にしたかったという質問者の心情は分かります。
共働き、子供の扶養は夫と妻のどちらか
共働きの場合、子供を夫と妻のどちら側の扶養にすればよいのでしょうか。ルールはあるのでしょうか。健康保険と税(所得税、住民税)では考え方が異なります。
通常は、年間収入の多い扶養者のほうに統一していると思います。場合によっては、別々にすることも可能です。例えば、健康保険は夫側に、税の面では妻側の扶養にするといったケースです。
健康保険の扶養について厚生労働省は、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」というルールを定めて周知しています。周知内容に「被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入が多い方の被扶養者とする」とあります。
夫婦の年間収入が近い場合、その差が1割超の場合には年間収入の多い側が扶養します。1割以内の場合は、主として生計を維持する側の扶養となります。このルールは、2021年8月から適用されています。
税については、夫と妻のいずれでも子供を扶養親族にすることができます。従業員は「扶養控除等申告書」を記入して毎年会社に提出しています。そこに記入する子供が扶養親族です。
扶養親族がいる場合、所得税や住民税は減額されます。税金計算において扶養控除があるからです。所得税は16歳未満の年少親族は扶養控除の対象になりませんが、住民税については減額対象になります。住民税の扶養関係は、扶養控除等申告書の下方に記入欄があります。
このように条件に合致する範囲で、子供の扶養についての選択は可能です。これらは法令的な話です。
扶養手当の支給は会社が定めたルールに従う
扶養手当といった福利厚生手当の支給は、法律で義務付けられていません。扶養手当は会社が任意で支給しているのです。なので、その支給ルールは会社によって様々です。もちろん、扶養手当そのものがない会社もあります。
質問のケースでは、扶養手当の支給条件に「配偶者の年間収入のほうが多い場合は扶養手当を支給しない」とあります。不支給になるのは当然といえます。
以前、筆者の顧客先でも同様のことがありました。その会社も、子供の扶養手当を手厚くしていたのです。夫の収入のほうが多いのに、自社に勤める従業員(妻)側の扶養にしているケースが発覚したのです。改めて対象者全員を確認したところ、約20人の該当者がいたようです。