Q.プロジェクト対応している顧客の場所が遠く、出張があります。宿泊費は定額で、出張先地域ごとに決まっています。安いビジネスホテルに宿泊すると差額が浮きます。先日の出張で課長職のエンジニアと同じビジネスホテルに泊まった際、宿泊費に差があることを知りました。部長や課長職に支給される宿泊費は1万300円で、担当職の自分は1万円なのです。300円の差ですが、ホテルに支払う宿泊料金は同じなのに、おかしくないでしょうか。
ごもっともです。筆者も同意見です。既に部長や課長職エンジニアとは、基本給や役職手当、賞与で差が付いています。一方ホテルは役職に関係なく、同じ料金を請求します。あなたは担当エンジニアだからといって安くしてくれません。
筆者は、顧問先企業から、出張旅費制度に関して相談を受けることがあります。宿泊費は役職や能力に関係のない必要経費なので、平等にするほうがよいと指導しています。もっとも、取締役や役員になるとセキュリティーや安全面、取引先との付き合いから料金の高いホテルに宿泊することはあります。
経営層とは目に見える待遇面の差があってよいと思います。従業員から見ても、同じだと夢がありません。例えば新幹線のグリーン席は経営層だけが利用できるといった待遇が分かりやすいでしょう。利用するか否かは、個人の判断に任せればよいわけです。
待遇面で差を付ける制度設計をする場合、雇用保険の被保険者か否かで区分すると分かりやすいです。これは給与から雇用保険料の控除があるかないかで確認できます。経営側になると雇用保険の被保険者になれません。役員でも労働者側の身分が濃いときは雇用保険の被保険者である場合があります。
優越感を味わえる金額ではない
以下、事業部長や部課長といった、従業員身分の管理職の話として続けます。雇用保険料を控除されている管理職だと考えてください。
役職に応じて、宿泊費に差を付けている出張旅費規程を、これまでにたくさん見てきました。管理職や部課長級エンジニアの宿泊費と担当エンジニアのそれに差があるとしても、法令上の問題はありません。会社が任意で決めてよいのですが、質問者が指摘するように不公平感はあります。
会社としては、役職が上がると優遇されるのだと従業員に意識させたいのでしょうか。300円は優越感を味わえるような金額ではありません。乱暴な言い方ですが、管理職側にすればどうでもよいささいな金額です。意識していなかった、知らなかったという管理職のエンジニアもいるでしょう。役職によって宿泊費にわずかな差を設ける意味はほとんどないといえます。