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 QRコード決済やシェアサイクルなど、中国でスマートフォンを活用したサービスが急速に普及している状況は、日本でも大いに関心を集めている。そうした先進的なサービスの普及を見て、「日本は遅れている」とする声がよく聞かれる。だが、環境の違いを無視して、単純に中国の現状を絶賛するだけでよいのだろうか。

中国でスマートフォンを活用したサービスが急拡大

 筆者は先日、取材のため中国を訪れた。そこで改めて感じたのは、中国でスマートフォンを活用したサービスがここ数年のうちに拡大し、それが日本でも脚光を浴びるようになってきたことだ。その代表例が本連載でも何度か取り上げている「QRコード決済」だろう。

 中国ではQRコードを用いた決済サービスとして、アリババグループ(Alibaba Group、阿里巴巴集団)系列の「Alipay」と、テンセント(Tencent、騰訊科技)の「WeChat Pay」の2つが急速に浸透。個人間送金の仕組みを活用するなどして、QRコードを読み取るだけで簡単に決済できることから急速に普及した。大規模な店舗やチェーン店などだけでなく、小規模店舗や自動販売機、露店や路上ライブの投げ銭に至るまで、ありとあらゆる決済にQRコード決済が使われている。

中国にある飲料自動販売機。AlipayやWeChat Payを活用し、QRコードを読み込んで決済することが可能だ(筆者撮影)
中国にある飲料自動販売機。AlipayやWeChat Payを活用し、QRコードを読み込んで決済することが可能だ(筆者撮影)
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 中国でここ数年のうちに急拡大した、スマートフォンを活用したもう1つのサービスが「シェアサイクル」、つまり自転車のシェアリングである。GPSや通信機能を搭載した自転車をスマートフォンで探してお金を払い、好きな場所まで移動できるという手軽さがヒットして人気が拡大。オフォ(ofo)やモバイク(Mobike)など新興のシェアサイクル企業が次々と登場し、都市部では街中にシェアサイクルがあふれる様子が日常的なものとなりつつある。

 中国で成功を収めたシェアサイクル事業者は、中国国内だけでなく、海外への進出を積極的に推し進めるようになってきた。実際Mobikeは2017年12月にLINEと提携し、2018年上半期の本格事業展開に向けて準備を進めている。

中国のシェアサイクル大手、Mobikeは日本法人を設立して日本進出に向けた準備を進めており、2017年12月にはLINEとの提携も発表している。写真は2017年12月20日のLINE・新事業展開に関する記者発表会より(筆者撮影)
中国のシェアサイクル大手、Mobikeは日本法人を設立して日本進出に向けた準備を進めており、2017年12月にはLINEとの提携も発表している。写真は2017年12月20日のLINE・新事業展開に関する記者発表会より(筆者撮影)
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 他にも中国ではシェアリング系のサービスを中心として、スマートフォンを活用した様々な生活系サービスが急速に広がっている様子がうかがえる。そうした中国でのスマートフォンサービスの急発展を見て、「日本は遅れている」「なぜ日本では普及しないのか」とった声を上げる人も少なからず出てきているようだ。だがそうしたサービスが普及するには、その国ならではの理由があることを忘れてはならない。

中国の既存の決済インフラは不便だった

 まず、なぜ中国でQRコード決済が普及したのだろうか。それは既存の決済手段が信頼性に乏しいという、中国ならではの事情が大きく影響していると言えよう。中国ではクレジットカードのような信用決済が成り立ちにくく、あまり普及が進んでいなかった。それに加え、現金の信頼性も必ずしも高いとは言えない。筆者も以前、中国のレストランでクレジットカードを使おうとしたら断られ、現金で支払いをしたら偽札をチェックする機械にかけられた、という経験をしたことがある。

 一方、中国でも最近はEC(電子商取引)やSNSの利用が盛んであり、そうしたサービスを利用する際の決済手段として使われていたAlipayなどはもともと信頼を得ていた。そうしたことから、QRコードによってオンラインの決済サービスが実生活にも進出したのを機として、QRコード決済が急速に広まったとみられる。単に利便性が高く導入コストが安いからだけでなく、既存の決済手段を上回る信頼性をもともと獲得していたことが、普及の拡大へとつながる大きな要因となったわけだ。