レシートの写真を1枚10円で買い取るというアプリ「ONE」が2018年6月12日に公開され、直後から想定を上回る買い取りが発生したため即日サービス停止となったことが話題となった。こうしたアプリが登場した背景には、商品購買データの価値の高まりがある。
「レシート1枚10円で買い取り」が話題に
2018年6月12日、ワンファイナンシャルというベンチャー企業が開発した「ONE」というアプリが公開され、大きな話題となった。これはレシートの写真を1枚を撮影すると、アプリ内のウォレットに10円が振り込まれるというのもの。ウォレットからは好きなタイミングで国内の金融機関に出金できるという。
買い物をした後のレシートは、筆者のようなフリーランスにとっては非常に重要な存在なのだが、そうではない多くの人にとってはあまり価値を持たないものなのだろう。それを撮影するだけでお金になるというお得さから、公開された直後からSNSなどで大きな話題を呼んだようだ。
実際、ワンファイナンシャルのCEO、Founderである山内奏人氏がTwitterでツイートした内容によると、同社はONEのアプリ公開後から約16時間で約8万5000ダウンロード、約7万ユーザーから24万5400万枚のレシートを買い取ったとのこと。想定を大きく超える買い取り数となったようで、その日のうちにサービスを一時的に停止する事態となった。
同社は6月18日、DMM.comの自動車買取アプリ「DMM AUTO」と連携し、ガソリンスタンドのレシート買取を開始するという形で、ONEのサービスを一部再開させた。当初のスタイルによるビジネスの再開時期は未定のようだ。
お得さを重視したサービス内容と話題性に加え、CEOが現役の高校生であるなど注目されやすい要素が多いこともあってか、サービス開始後いくつかのテレビ番組でONEが紹介されている。それだけに、当初のスタイルでサービスを本格的に再開した際にも関心が高まることは確かであり、同社には慎重な対応が求められることとなりそうだ。
ベンチャー企業のアプリの公開直後、利用者が殺到してサービス停止に追い込まれるという事態は、2017年にも起こっている。2017年6月にバンクが公開した「CASH」は、売りたい中古品の写真を撮影するだけで即座に査定してお金に変える「質屋アプリ」だ。CASHも、やはり利用者が殺到した結果、公開当日にサービスの一時停止に追い込まれている。その後CASHを運営するバンクはDMM.comの傘下となっている。
スマートフォンの普及で購買データの取得が可能に
これらの事例から、スマートフォンで手間をかけずにお金が得られるサービスには、利用者が殺到しやすい傾向が見えてくる。だが、ここで注目すべきは、ONEのようなサービスが生まれるに至った背景である。
ONEはレシートの画像を10円で買い取り、そのレシートにある購買情報をデータとして収集し、それをまとめて購買情報を欲しがる企業に販売するというのがビジネスモデルのようだ。商品の販売や広告、マーケティングなどに携わる多くの企業にとって、消費者がどの店で、どのような商品を、どのような組み合わせで購入しているかという情報は、販売促進に向けた施策を打つための行動分析をするうえで、非常に大きな価値を持つ。このことから、データの販路は多く存在すると考えられる。
顧客の購買情報は通常、店舗を運営する企業の外部に出ることはない。だが多くの人がスマートフォンを所有し、利用するようになったことで状況は大きく変わった。スマートフォンを使い、消費者に手軽かつ明確なメリットを提供すれば、消費者が自主的に情報提供してくれる。ONEのようにスマートフォンの特性を生かしたサービスを用意することで、購買情報を収集する手段という最も大きな課題をクリアしやすくなったわけだ。
しかも現在ではスマートフォンのカメラやOCR(Optical Character Recognition、紙などに書かれた文字を読み取りテキストデータに変換すること)の進化によって、アナログな情報であるレシートの文字をデジタル化するハードルも低くなったし、ビッグデータの解析に関するノウハウも多く存在する。そうした様々な条件が整ったからこそ、ONEのようなサービスが生まれたといえよう。