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 ソフトバンクは2018年7月19日、中国の滴滴出行(Didi Chuxing、以下DiDi)と合弁会社を設立し、日本でスマートフォンアプリを用いたタクシー配車プラットフォームを提供すると発表した。DiDiの技術を活用する。法令順守を重視し、ライドシェアではなくあくまでタクシー配車サービスとして展開するという。同種のサービスとしては後発となるだけに、どのような戦略で市場開拓を進めるのだろうか。

中国のタクシー配車プラットフォームを日本で展開

 2018年7月9日に東京証券取引所へ新規上場予備申請をするなど、上場に向けた準備を着々と進めるソフトバンク。同社はかねてより、ソフトバンクグループらが設立した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の出資企業と国内で合弁会社を作り、出資企業のサービスをソフトバンクの顧客に提供することで、業績を伸ばすという成長戦略を打ち出している。

 その具体的な施策の1つとして2018年7月19日に発表したのが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先の1つである中国のDiDiと、合弁会社「DiDiモビリティジャパン」を設立して日本でタクシー配車サービスを提供するというものだ。DiDiは中国を主体に、メキシコやオーストラリアなどでもタクシー配車やライドシェアなどの交通プラットフォームを提供、5億5000万人以上の登録者を獲得しているという。

ソフトバンクとDiDiは2018年7月19日、合弁会社を設立し、日本でDiDiのプラットフォームを活用したタクシー配車サービスを提供すると発表した。写真は同日の滴滴出行とソフトバンクの合弁事業に関する記者説明会より(筆者撮影)
ソフトバンクとDiDiは2018年7月19日、合弁会社を設立し、日本でDiDiのプラットフォームを活用したタクシー配車サービスを提供すると発表した。写真は同日の滴滴出行とソフトバンクの合弁事業に関する記者説明会より(筆者撮影)
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 そのDiDiが持つプラットフォームを日本のタクシー会社に向けて提供し、タクシー配車の利便性をより高めるというのが、合弁会社を設立した狙いのようだ。DiDiが提供するのは大きく分けて、乗客がタクシーを呼ぶのに使うスマートフォン用アプリと、タクシードライバー用のアプリ、そしてタクシー会社が利用するWebベースの管理コンソールの3つである。

 このうち乗客向けのアプリは、基本的には一般的なタクシー配車やライドシェアアプリなどと大きく変わらない。スマートフォンから目的地までのタクシーを呼ぶことができ、運賃の支払いは登録したクレジットカードで済ませられる。乗車後はUberのように、ドライバーを評価することも可能だ。

 他のタクシー配車アプリと大きく異なる特徴と言えるのが、日本人が日本版のDiDiを中国で、あるいは中国人が中国版のDiDiを日本で利用できる「ローミング」である。中国版DiDiは日本でもWeChat PayやAlipayによる決済が可能とのこと。また外国人との会話のため、自動翻訳によるドライバーとのコミュニケーション機能も提供するという。

海外でインストールしたDiDiのアプリを使って日本国内で配車できる「ローミング」も提供するとのことで、訪日中国人がDiDiによるタクシー配車を利用しやすくなる。写真は2018年7月19日に開催された、滴滴出行とソフトバンクの合弁事業に関する記者説明会より(筆者撮影)
海外でインストールしたDiDiのアプリを使って日本国内で配車できる「ローミング」も提供するとのことで、訪日中国人がDiDiによるタクシー配車を利用しやすくなる。写真は2018年7月19日に開催された、滴滴出行とソフトバンクの合弁事業に関する記者説明会より(筆者撮影)
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