乗車効率を高める仕組みをオープンに提供

 だがDiDiがより重点を置いているのが、タクシードライバーやタクシー会社が利用するアプリやサービスである。ドライバー向けアプリには、乗客の多いエリアを予測するヒートマップ機能を提供。15分先の需要を85%の精度で表示するとのことで、経験が浅いドライバーであっても乗客の多いエリアを運行できるようになるという。

 またドライバーが営業所の車庫に帰る際、もし車庫とは逆の方向に向かう乗客を乗せてしまうと、ガソリン消費が多くなり効率が悪くなることから、車庫の方向に向う乗客だけに配車する機能なども用意しているとのこと。DiDiでは毎日70テラバイトの位置情報データを収集しており、膨大なデータと高度なAI技術を活用した予測精度の高さが、ドライバーの無駄を減らし高い売り上げをもたらす強みになっているのだという。

DiDiは取得した膨大な位置情報データとAIを活用することで、高い精度の需要予測を実現しているという。写真は2018年7月19日の、滴滴出行とソフトバンクの合弁事業に関する記者説明会より(筆者撮影)
DiDiは取得した膨大な位置情報データとAIを活用することで、高い精度の需要予測を実現しているという。写真は2018年7月19日の、滴滴出行とソフトバンクの合弁事業に関する記者説明会より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 またタクシー会社向けのコンソールでは、配車状況やドライバーの稼働状況を確認できるだけでなく、乗客によるドライバーの評価を確認することも可能だ。それゆえ単に効率を高めるだけでなく、ドライバーへの指導やサービス改善にも役立てられる強みがあるとのことだ。

 DiDiのプラットフォームは、乗客とドライバーだけでなく、タクシー会社に対しても当面無料、かつオープンな形で提供していくという。導入のハードルを下げ、より多くのタクシー会社に使ってもらい、DiDiのプラットフォームのメリットを知ってもらうことで利用を拡大したい狙いがあるようだ。

白タクを排除する仕組みを用意

 ただ行き過ぎたオープン化は、自家用車などをタクシーとして運用する「白タク」によって、DiDiのプラットフォームが勝手に使われてしまう恐れも出てくる。そこでDiDiモビリティジャパンの代表取締役社長であるStephen Zhu氏は、「顔認証など最先端のセキュリティシステムを用意しており、タクシー会社と協力して正規のドライバーだけが使える仕組みにしていく」と話し、テクノロジーを活用して白タクを排除する仕組みを用意する考えを示した。

 DiDiモビリティジャパンの狙いは、DiDiのプラットフォームを活用し、的確な需要予測でタクシーの乗車効率を上げること、そして訪日外国人の多くを占める中華圏の観光客を獲得しやすくすることの2つに集約される。それによって、少子高齢化で市場が縮小傾向にあり、地方ではドライバー不足の問題なども抱えるタクシー会社の業績を伸ばし、それを自社の売り上げ拡大につなげるのが最終的な目的と言えそうだ。

 なかでも高い効果が期待できるのは、訪日外国人の白タク利用の排除である。中国からの訪日外国人は自国のライドシェアアプリを用い、日本では違法となる白タクを利用するケースが増えている。特に訪日外国人が多い地域では大きな問題となっている。

 中国最大の配車プラットフォームであるDiDiが日本に進出し、ライドシェアではなくタクシー配車のみを提供することは、そうした白タクの問題を解消する要因の1つになり得る。DiDiモビリティジャパン取締役の菅野圭吾氏も「今回提供するサービスで訪日外国人、特に中国人が使える状況になる。我々のサービスが浸透していけば自然にそういう(白タクが排除される)形になるのでは」と話している。