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多人数で同じAR空間を共有

 またナイアンティックは今後のARに向けた取り組みとして、2018年6月に独自のARプラットフォーム「リアルワールド・プラットフォーム」を発表している。同社では機械学習などを活用し、2次元の情報から物体の空間的な位置を正確に把握することで、仮想のキャラクターなどの情報を現実空間に重ね合わせ、豊かな表現力を実現するAR技術を開発している。加えて同社は、ポケモンGOやIngressなどのゲームで、多人数が同時にARや位置情報を活用するコンテンツを実現する技術を構築してきた。

 それらの技術をプラットフォームとして自社以外にも提供することにより、多人数で同時に利用できる高度なARコンテンツの開発を推し進めるのが、リアルワールド・プラットフォームの狙いのようだ。現時点ではまだ一部のパートナーに限定した形で開発を進めている段階だが、将来的には多くの企業などに開放されることとなるようだ。

 INNOVATION TOKYO 2018では、そのリアルワールド・プラットフォームを用いて開発した「Project NEON」が会期途中の2018年10月17日より公開されていた。これはスマートフォンを用い6人でプレイするARゲームで、地面に落ちている白い球を拾い集め、それを他のプレーヤーにぶつけ合いながら戦うというものだ。

2018年10月17日からINNOVATION TOKYO 2018で公開されていた「Project NEON」をプレイしている様子。複数人でAR空間を共有できる、リアルワールド・プラットフォームをふんだんに活用したゲームになる。写真は同イベントより(筆者撮影)
2018年10月17日からINNOVATION TOKYO 2018で公開されていた「Project NEON」をプレイしている様子。複数人でAR空間を共有できる、リアルワールド・プラットフォームをふんだんに活用したゲームになる。写真は同イベントより(筆者撮影)
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 Project NEONはゲームとしてはシンプルな内容だが、異なるプレーヤーが同一のAR空間を共有するゲームは従来、大規模な施設で専用の設備を用意する必要があった。それを手元のスマートフォンでリアルタイムにプレイできるという点には驚きがあった。

スマートフォンを超えたARの普及を目指す

 同社CEOであるジョン・ハンケ氏は、ARについて「ARは黎明(れいめい)期のテクノロジーだが、ゲームは技術が完全でなくてもサービスを提供できるし、進化を促すこともできる」と話し、短期的には既に普及しているスマートフォンに向けたゲームに注力する考えを示す。だがそれと同時に、ハンケ氏は「ARのポテンシャルは5インチのスマートフォンにとどまらない」とも話し、将来的にはよりARに適したデバイスが現れ、スマートフォンを超えて普及することを望んでいるようだ。

 こうしたナイアンティックの取り組みからは、ARがよりリアルかつ手軽なものとなって現実世界に広がっていく可能性を感じ取ることができる。ハンケ氏が「ARは成功が約束された技術」と話すように、ARにはようやく明るい日が差してきたと言えそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。