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お得さが継続しなければユーザーは定着しない

 だがPayPayがそこまでして加入者獲得を急ぐ裏には、QRコード決済事業者の急増によってサービスが埋没しかねない危機感があるが故とも言える。

 そもそもQRコード決済は、QRコードという共通の仕組みを用いるため技術的に明確な優位性を打ち出しにくい一方で、比較的参入がしやすい。それゆえ日本政府のキャッシュレス化推進や、中国におけるQRコード決済の急速な普及にビジネスチャンスを見出した企業が次々と参入し、事業者の乱立という状況に陥っている。

 現在の状況は、利用者からしてみれば、そもそも使える店舗自体がまだ少なくQRコード決済のメリットを感じにくいにもかかわらず、サービス間の明確な違いを見出しにくいため混乱が生じやすい。利用者の敬遠が起こり得る状況だと言える。こうした状況は非接触型の電子マネーでも見られたものだが、参入障壁が低いQRコード決済ではより深刻な状況を招きかねない。

 最近では行政主導でQRコードの規格統一に向けた動きが進められるなど、事業者乱立による混乱を防ぐ動きも進んでいる。だが特にIT関連企業を中心として、参入企業の多くは中国における「AliPay」や「WeChat Pay」のようなデファクトスタンダードの座を獲得することを狙っているだけに、取り組みが容易に進むとは考えにくいだろう。

 そうした現状があるだけに、PayPayは混戦状態から一気に抜け出すべく、サービス開始当初から大盤振る舞いで、短期間のうちに利用者を増やす必要があったのだろう。もっとも、ここまでの大胆な施策が打ち出せるのは、企業体力があり、なおかつトップダウンによる事業スピードの速さが特徴であるソフトバンクグループの傘下企業ならではと言えそうだ。

 だが1つ気になる点がある。PayPayの代表取締役社長執行役員CEOである中山一郎氏が、今回のキャンペーンを実施した後の取り組みについて「白紙」と述べるにとどまっていること。日本は中国と異なり、QRコード以外にも代替の決済手段が多く存在するだけに、お得さでPayPayに引き付けられた人達は、そのお得さが続かなければ利用を継続しないだろう。PayPayには早い段階で、継続利用につなげるためのさらなる施策が求められることになりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。