この他にもイベントでは、保険や証券、さらに「LINE家計簿」といった家計管理サービスに至るまで、多くのサービスに関する発表がなされており、金融事業の拡大が急速に進んでいる様子を見て取ることができた。だが中でも最も注目を集めたのは、LINE社が独自の銀行「LINE Bank」を設立する準備を開始したと発表したことであろう。
しかもLINE社はLINE Bank設立に当たり、メガバンクの一角を占めるみずほフィナンシャルグループをパートナーにしたと発表したことが、一層大きな驚きをもたらした。具体的には、LINE社傘下で金融事業を担うLINE Financialと、みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行が共同出資して銀行設立に向けた準備会社を設立。2020年の開業を目指すとしている。
インターネットの企業文化を取り入れたい
しかし両社はなぜ、共同で新しい銀行を設立するに至ったのだろうか。
みずほ銀行の狙いは明白だ。みずほフィナンシャルグループの執行役副社長である岡部俊胤氏は、従来のサービスではリーチできなかったデジタルネイティブ世代の若い顧客を獲得するためだと話す。
同氏は、みずほ銀行側は黒子として、オリエントコーポレーションなどグループが持つリソースを活用しながら、LINE社をフォローする立場になると話している。その言葉が示す通り、準備会社の出資比率はLINE Financial側が51%、みずほ銀行側が49%と、LINE側が主導権を握っている。
さらにみずほ銀行は、LINE社主導のサービスによってビッグデータなどの新しい技術研究を推し進めるとともに、LINE社が持つインターネット関連企業ならではのスピード感やチャレンジ精神を自社の企業文化に取り入れ、変えていきたい考えもあるようだ。
銀行は金融サービスの充実に欠かせないパーツ
では、主導権を持つLINE社側の狙いはどこにあるのだろうか。LINE社の代表取締役社長CEOである出澤剛氏は「現在拡大しているLINE Payの利用者に対して色々な金融サービスを提供するとなると、最も必要なのは銀行業と考えている」と話し、LINEの金融サービスを拡大する上で銀行業は欠かせないという認識を示している。
一方で、LINE Bankのサービス内容については、まだ準備段階であることを理由に詳細な説明はしなかった。出澤氏は「コンセプトは、5年後を見据えた新しい金融サービスを作ること」と話している。スマートフォンを中心として、現在の生活環境より先の利便性を見越したサービスを展開したい考えのようだ。