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 インターネット関連企業とメガバンクが共同で銀行を設立したという例はこれまでにもいくつか存在している。例えば三井住友銀行はヤフーと「ジャパンネット銀行」を、三菱UFJ銀行はKDDIと「じぶん銀行」を設立している。

 いずれの銀行も設立当初は話題に上ったが、現在銀行サービス自体として大きな存在感を示すには至っていないというのが正直なところである。ただ、インターネット関連企業が金融サービスを充実させるという視点で見れば、銀行を持っていること自体に大きな意味があるようだ。

 例えばKDDIは2018年4月、同社の電子マネーサービス「au WALLET」に対して、プリペイドカードの残高が不足した場合にじぶん銀行の口座から自動的にチャージする「リアルタイムチャージ」や、プリペイドカードの残高をじぶん銀行の口座に払い出す機能、そしてプリペイドカード同士で残高を送金し合える機能などを追加している。同社の代表取締役社長である高橋誠氏は当時、こうした機能を実現するには銀行口座や本人確認が必要であり、au WALLETとじぶん銀行の2つのサービスを持っているからこそ実現できたと話していた。

KDDIは2018年4月5日に、じぶん銀行の口座からau WALLETプリペイドカードに自動チャージする「リアルタイムチャージ」を提供するなど、じぶん銀行を活用して金融サービスの拡充を図っている
KDDIは2018年4月5日に、じぶん銀行の口座からau WALLETプリペイドカードに自動チャージする「リアルタイムチャージ」を提供するなど、じぶん銀行を活用して金融サービスの拡充を図っている
(出所:じぶん銀行)
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 そうしたことからLINE Bankが設立されたとしても、多くの人が驚くような革新的なサービスを実現する可能性はそれほど高くないと筆者は見る。だがLINE社は銀行を持つことで、LINE上で提供できる金融サービスの幅と自由度が大幅に高まり、それが同社の金融サービス全体の優位性につながる可能性は高いと言えそうだ。

銀行業に求められる長期的な視点

 一方で気になるのは、インターネット関連企業ならではのスピードの速さが、金融事業を提供するうえでは信頼性という部分でマイナスの影響を与える可能性があること。特にLINE社は、最近であればモバイル通信サービス「LINEモバイル」の主導権をソフトバンクに移すなど、事業の見直しスピードが非常に速いことで知られる。それだけに消費者からしてみれば、銀行業に関しても成功に至らなければすぐに終了、売却してしまうのではないかという懸念がある。

 出澤氏はこの点について、金融事業は他のサービスとは異なり長期的に取り組むものと答え、短期間での終了や売却については否定している。トラディショナルな銀行業とスピードが速いインターネット関連事業のバランスを取り、長期的なサービス提供ができるのかどうか、LINE社の手腕が大きく問われることとなりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。