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 一方でスマートフォン向けのVRは、あくまでスマートフォン上のサービスの延長線上にある。開発者がアプリを公開する場所はスマートフォン向けの管理されたマーケットに限定されることから、自由度はパソコンよりも低い。スマートフォン自体のハード性能を引き上げるにはハード自体を買い替えなければならないなど、ユーザーにかかる負担が大きいのもデメリットとなる。

 導入や利用のしやすさという部分でスマートフォンには優位性があるものの、開発の自由度やスピード感、ユーザースキルの向上といった部分ではパソコンに劣ることから、黎明期のサービスにはあまり適したプラットフォームとは言い難い。それ故ソーシャルVRがスマートフォンで提供されるには、ある程度サービスの内容が安定し、誰でも利用できる仕組みが整えられてからになると考えられ、まだ時間がかかるのではないだろうか。

本命は「スタンドアロン型VRデバイス」と「5G」

 とはいえ、いずれはスマートフォンがソーシャルVRを利用する主流のデバイスになると、必ずしも言い切れないのも正直なところである。その理由はデバイスの進化、そして5Gにある。

 デバイスの進化という意味でいうと、2018年にフェイスブック・テクノロジーズの「Oculus Go」や中国の聯想集団(レノボ)の「Mirage Solo」に代表される、スタンドアロンで利用できるVRデバイスが、3万〜5万円程度と比較的購入しやすい価格帯で登場したことは大きな変化と言えるだろう。VRを利用するうえで本来、パソコンをつないだりスマートフォンを装着したりすることは必要のないことだ。それだけにスタンドアローン型VRデバイスの登場は、VRの利用体験向上に大きな影響を与えると考えられるのだ。

2018年には「Oculus Go」や「Mirage Solo」など、パソコンやスマートフォンを必要としないスタンドアロン型のVRデバイスが登場し、注目を集めた。写真は2018年10月12日の「INNOVATION TOKYO 2018 - AR Playground with Niantic」より(筆者撮影)
2018年には「Oculus Go」や「Mirage Solo」など、パソコンやスマートフォンを必要としないスタンドアロン型のVRデバイスが登場し、注目を集めた。写真は2018年10月12日の「INNOVATION TOKYO 2018 - AR Playground with Niantic」より(筆者撮影)
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 さらに、従来のスタンドアロン型VRデバイスは頭の動きをトラッキングする「3DoF」にのみ対応していたが、2018年10月にはHTCの「VIVE FOCUS」、そして2019年にはフェイスブック・テクノロジーズの「Oculus Quest」など、6軸の動きを捉え体の動きもトラッキングする「6DoF」に対応するデバイスが相次いで登場。単独でよりリアルなVR表現が可能になるとみられている。

 さらに「5G(第5世代移動通信システム)」の登場によって、高速大容量通信がどこでも利用できるようになり、データ通信量が多いVRコンテンツも楽しみやすくなると考えられる。

 もちろん、5Gの商用サービス提供開始は日本では2020年の予定であることから、そうした条件がそろうにはまだ時間を要するだろう。だがコンテンツを楽しむだけでなく、ソーシャルという新たな利用目的が生まれたことで、VRを楽しみたいというニーズは今後一層高まっていき、それが技術開発を後押しすることにつながっていくだろう。2019年はその片鱗(へんりん)を見ることができるかが注目だ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。