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 2019年も一層盛り上がると考えられるQRコード決済サービス。だが、セキュリティーの問題や過当競争の懸念、そして最も必要とされているアウトバウンド向け対応が手付かずという課題も浮上している。

認知を高めたが不安も与えたPayPayのキャンペーン

 2018年、スマートフォン上のサービスで最も盛り上がったのは何かと聞かれれば、筆者は「QRコード決済」と答えるだろう。2018年はそれくらい、QRコード決済を中心としたスマートフォン決済に関する動きが非常に激しい1年でもあった。

 実際、NTTドコモの「d払い」やソフトバンクとヤフーが合弁で展開する「PayPay」など、QRコード決済への新規参入が相次いだ。それだけでなく、LINE社の「LINE Pay」が中小店舗向けに3年間、決済手数料を無料にする施策を打ち出したほか、2018年12月にはPayPayが100億円を利用者に還元するという大規模なキャンペーンを実施。思い切った施策を次々と打ち出したことでも注目されている。

 そうした各社の取り組みによって、QRコード決済が利用できる店舗は徐々に広がり、利便性が高まってきたのは確かであろう。だが一方で短期間のうちにサービスが急増したことで、いくつかの課題が見えてきた。

 課題を浮き彫りにしたのがPayPayである。PayPayは当初セキュリティー上の問題を抱えており、先のキャンペーンをきっかけとしてPayPayを経由したクレジットカードの不正利用が相次いだことで大きな問題となった。PayPayとしてはキャンペーンによるスタートダッシュで一気にライバルに差をつける狙いがあったのだろうが、結果的にセキュリティー面での不安を与え、QRコード決済の印象を悪くしてしまった感は否めない。

 PayPayはその後、不正利用の主因となっていたクレジットカードのセキュリティーコード入力回数に上限を設けたほか、クレジットカード経由での決済時に利用できる料金に制限をかけるなどの対策を実施。さらにより抜本的な対策として、2019年1月に3Dセキュアの導入を進めるなど、現在もセキュリティー対策に追われているようだ。

100億円を費やした利用者還元キャンペーンがわずか10日で終了するなど、PayPayは大きな話題をもたらした一方、セキュリティー対策の甘さが浮き彫りにもなった。写真は2018年12月19日のソフトバンク上場記者会見より(筆者撮影)
100億円を費やした利用者還元キャンペーンがわずか10日で終了するなど、PayPayは大きな話題をもたらした一方、セキュリティー対策の甘さが浮き彫りにもなった。写真は2018年12月19日のソフトバンク上場記者会見より(筆者撮影)
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