「5G元年」となった2019年に開催された「MWC19 Barcelona」では、5G(第5世代移動通信システム)に対応したスマートフォンが多数発表されるなど、5Gに関する展示が非常に目立っていた。だが一方で、5Gのポテンシャルを真に活用する上でスマートフォンは力不足となりつつあり、そこにとどまらない取り組みが必要だとも感じた。
商用サービス開始前に5Gスマートフォンが勢ぞろい
ここ最近、次世代のモバイル通信規格である5Gへの関心が高まっている。スペイン・バルセロナで2019年2月25日から28日まで開催された携帯電話の総合見本市イベントであるMWC 2019でも、5Gに関して多くの展示があった。
それだけ5Gが大きく注目されるようになったのは、世界的に2019年から5Gの商用サービスが本格的にスタートするといわれているためだ。既にサービスを開始している米国に続いて、韓国や中国、欧州などでも2019年に5Gの商用サービスを始める動きが進んでいる。
そうしたことから2019年が「5G元年」と呼ばれるまでに至っている。2020年の商用サービス開始を予定し、当初は5Gで先頭を走っていたはずの日本が「遅れている」と言われるようになったほど、5Gの動向は激しく変化していることが、MWC 2019から見て取ることができた。
そうした各国の携帯電話事業者の動向を受けてか、スマートフォンメーカーも5G対応スマートフォンを相次いで投入し、5G商用サービスに向けた本格的な準備を整えているようだ。中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の「HUAWEI Mate X」や、韓国サムスン電子の「Galaxy S10 5G」などがその代表的な例と言えるが、他にも韓国LG電子や中国の中興通訊(ZTE)、中国の小米(シャオミ)などの主要スマートフォンメーカーが、MWC 2019に合わせて5G対応スマートフォンを相次いで発表している。
本格的な商用サービスの前からWi-Fiルーターなどデータ通信専用の端末だけでなく、スマートフォンなどコンシューマー向け端末が多数そろったというのは、3Gや4Gの頃には見られなかった動きだ。それだけ多くの企業が5Gに強い期待を込めているとも言えそうだ。
5Gはスマートフォンに釣り合わない
だがMWCにおける各社の5Gの動向を見るに、スマートフォンが5Gのキラーデバイスになるとは考えにくい印象も受けた。なぜなら、現在のスマートフォンにとって5Gはオーバースペックであるためだ。
5Gの特徴である「高速大容量通信」は、映像などの大容量コンテンツを利用する上で大きなメリットになるが、スマートフォンには手で持って利用するというサイズ的な制約がある。折り畳みスマートフォンが広く普及し、その大画面を生かすコンテンツが登場するようにならない限り、5Gの大容量通信を有効活用するのは難しいだろう。また5Gのもう1つの特徴である「低遅延」も、それを生かせるシーンが現状、応答速度が求められるオンラインゲームなどに限られてしまう。