スマートフォンが幅広い層に普及して久しいが、いまだに浸透が進んでいないのがシニア層である。あらゆる手を尽くしてもなお、なかなか普及率が上がらない状況だが、シニアの今後を考えると普及の手を緩めてはいけないというのも、また事実である。シニアへのスマートフォン普及に向けた最近の取り組みを追った。
一向に上がらないシニアのスマートフォン普及率
スマートフォンが多くの人に普及したことで、最近はスマートフォンそのものよりも、スマートフォンを活用して生活を便利にするサービスの提案が注目されている。だがそのスマートフォンの普及がなかなか進まないのが、主に60代以上のシニア層である。
総務省が公表している平成29年度の通信利用動向調査を見ると、60〜69歳のスマートフォン利用率は39.4%と、スマートフォンの利用が制限されていることの多い子供世代(6〜12歳)の32.4%に匹敵する低さだ。50〜59歳の68.4%と比べると、その低さが際立っていることが理解できるだろう。
もちろん携帯電話事業者のほうも、そうした状況に手をこまぬいていたわけではない。シニアにスマートフォンを使ってもらうべく、フィーチャーフォンからスマートフォンへの買い替えをしやすくするなど、数多くの優遇策を打ってきた。だが現状を見るに、それが普及の決定打へとはつながっていないようだ。
なぜシニアがスマートフォンへの買い替えをしないのか。主としてフィーチャーフォンの利用に慣れていること、そしてスマートフォンの利用料金が高いことの2つが常に理由として挙げられている。つまり現在の環境に特に困っておらず、コストをかけてまでスマートフォンに移行するメリットを実感できないことが、普及の妨げになっていると言えそうだ。
だが今後を考えれば、そうもいかない現実がある。なぜなら最近はキャッシュレス決済やタクシー配車など、多くの生活系サービスがスマートフォンの利用を前提にしたものとなりつつあるからだ。スマートフォンの普及が進まなければ、それを利用した生活系サービスの恩恵を受けられない。それだけに、シニアへのスマートフォン普及が進まないことは、シニアが生活弱者となる恐れがあるわけだ。