スマートフォンで手軽に利用できるラストワンマイルの移動手段として、中国で爆発的な人気となり日本でも注目を集めていたシェアサイクル。だがここ最近、その中国で大手事業者の経営危機が報じられるなど行く末に不安感が漂っている。そこにはテクノロジーだけでは解決できない大きな課題が影響しているようだ。
2018年から一転して注目度が落ちたシェアサイクル
2019年4月9日にKDDIが「au PAY」を開始するなど、競争激化の一途をたどっているQRコード決済。そのQRコード決済と同様に、スマートフォンを活用した中国発のサービスとして、ここ数年来注目されていたのがシェアサイクルだ。
GPSや通信機能を搭載した自転車を配置し、それをスマートフォンから探し、スマートフォン上で決済して好きな場所まで乗ることができる。こうした新しい仕組みのシェアサイクルは中国で爆発的な人気となった。その結果、都市部を訪れると道に多くのシェアサイクルが並ぶという光景が当たり前のものとなったのである。
シェアサイクルの登場は日本でも大きな注目を集め、中国などでシェアサイクル事業に成功を収めた企業や、日本のベンチャー企業などが相次いでこの事業に進出。全国各地でシェアサイクルのサービスを次々と開始するに至っている。
中でも注目を集めたのは、やはり中国でシェアサイクル大手となった企業の日本進出であった。この分野の大手であり「ofo(オッフォ)」ブランドでサービスを展開する中国の北京拝克洛克科技(以下、オッフォ)は日本法人のOFO JAPANを設立し、2018年3月より和歌山市でサービスを開始。その後北九州市、大津市などとも連携してシェアサイクル事業を拡大していた。
また同じく中国で急成長した「Mobike(モバイク)」を運営する北京摩拝科技(以下、モバイク)は、2017年に日本法人のモバイク・ジャパンを設立し、2017年8月に札幌市、2017年12月に福岡市で実証実験を開始。さらに2017年12月にはLINE社と提携し、メッセンジャーアプリ「LINE」からMobikeを利用できるようにするなど、LINEの顧客基盤を生かして事業を拡大していく方針を打ちだしていた。
だが現在、過熱の一途をたどっているQRコード決済と比べると、シェアサイクルに関しては大きな動きがあまり見られなくなったように感じる。継続的に事業展開を進めている企業もあるが、その規模は依然として小規模の実証実験レベルにとどまるものが多く、どこでも利用できるという状況には程遠い。