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「App Store」や「Google Play」では足りないもの

 だがここで気になるのが、アップルやグーグルの両社は既にスマートフォンなどに向けたアプリプラットフォームとしてそれぞれ「App Store」「Google Play」を提供しており、大きなゲームプラットフォームを持っていることである。にもかかわらず、新たなゲームプラットフォームを生み出す理由はどこにあるのだろうか。それは将来を見据えると既存の仕組みでは限界があると感じたためではないだろうか。

 Stadia、Apple Arcadeは共にパソコンやテレビなどもサービスの対象としているが、このことは両社が自社のゲームプラットフォームをスマートフォンやタブレットだけにとどまらない、より大きな領域へと広げていきたいことの表れと見ることができるだろう。

 だがグーグルにとって、Androidはスマートフォンの性能やOSバージョンにばらつきがあり、消費者に共通したコンテンツ体験を提供できないという弱みを抱えていた。そのことが、ハードウエアやOSに依存することなくクラウドでゲームを提供し、共通の体験を与えるというStadiaの発想を導き出すに至った要因だと言えそうだ。

 そしてアップルの場合、発表時にゲームの質を強調していたことからも分かるように、有料・無料のアプリが混在している現在のApp Storeの仕組みではコンテンツの質をコントロールすることに限界を感じていたことが、Apple Arcade提供の理由と考えられる。

 Apple Arcadeも他のサブスクリプション型サービスと同様、ゲームを提供するベンダーは利用状況に応じたレベニューシェアで売り上げを得る仕組みになると考えられる。つまり提供される全てのゲームが、ある意味有料のゲームになることから、無料アプリが多くを占めるApp Storeと比べアップル側の審査体制をより強化し、品質をコントロールしやすくできるというわけだ。

 もちろん両社のサービスはまだ概要が発表されたばかりで、料金やゲームタイトルなど具体的な内容についてはまだ明らかにされておらず、現時点では評価が難しい部分も多い。だが海外で5Gの商用サービスが本格化し、スマートフォンがITの中心だった時代が終焉(しゅうえん)を迎えようとしている。そのスマートフォンで一世を風靡した2社がゲームで新たな手を打ってきたことは、大きな変化を迎える重要な出来事と見て間違いないだろう。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。