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 ソフトバンクは2019年5月8日、ヤフーを子会社化すると発表した。兄弟会社だったヤフーを子会社化することで、ソフトバンクは非通信分野での事業拡大に向けた連携を強化するとしている。一方で今回の取引が両社の本意によるものなのか、という見方も少なからずある。

以前から深かったソフトバンクとヤフーとの関係

 携帯電話大手のソフトバンクは、2019年5月8日に開いた決算説明会でいくつかの大きい発表を実施した。特に大きい発表だったのが、兄弟会社であるヤフーの連結子会社化だ。

 ソフトバンクは2019年6月にヤフーが実施する第三者割り当てによる新株発行を4565億円で引き受け、出資比率を12.08%から44.64%にまで上げる。一方でヤフーは、従来の親会社であるソフトバンクグループジャパンが持つ36.08%の株式を株式公開買い付けで取得。これによってソフトバンクグループジャパンとの親子関係が解消され、ヤフーはソフトバンクの連結子会社となる。

ソフトバンクは2019年5月8日の決算説明会で、ヤフーの連結子会社化を発表。説明会にはヤフーの代表取締役社長である川邊健太郎氏も登壇した。写真は同説明会より(筆者撮影)
ソフトバンクは2019年5月8日の決算説明会で、ヤフーの連結子会社化を発表。説明会にはヤフーの代表取締役社長である川邊健太郎氏も登壇した。写真は同説明会より(筆者撮影)
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 ソフトバンクとヤフーは兄弟企業だったということもあり、これまでにも多くの連携を図っている。実際、現在のソフトバンクグループに当たる旧ソフトバンクがボーダフォンの日本法人を買収し、ソフトバンクの前身の1つに当たるソフトバンクモバイルを設立して携帯電話事業を始めたときから、既にヤフーはフィーチャーフォン向けにポータルサイト「Yahoo!ケータイ」を提供していた。

 さらにスマートフォン時代に入ってからは、2014年3月にヤフーが、現ソフトバンクの前身の1つとなるイー・アクセスを旧ソフトバンクから買収し、「ワイモバイル」ブランドで携帯電話事業に参入すると発表。その2カ月後に買収は中止となったものの、イー・アクセスはワイモバイルに社名を変更し、ヤフーと連携してサービスを提供。ワイモバイルがソフトバンクに統合された後も、ワイモバイルブランドとしてサービスを継続している。

 その後もソフトバンクは、2013年より「Yahoo!ショッピング」などのEコマース事業強化を打ち出したヤフーと、EC事業を中心に連携を強化。2015年にはソフトバンクブランドの利用者に、IDなどの入力が不要でヤフーのポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のサービスが利用できるスマートログイン機能を提供する他、毎月の携帯電話料金と合算でYahoo!ショッピングなどの料金を支払える仕組みを提供。さらに2017年には、ワイモバイルとソフトバンクの両ブランド利用者に、Yahoo! JAPANの有料サービス「Yahoo!プレミアム」を追加料金不要で利用できる施策を提供している。

 そして2018年には、ヤフーとソフトバンクは合弁で、QRコード決済サービス「PayPay」を提供する同名の企業を設立。100億円を費やした大規模なキャンペーンを立て続けに実施するなどして、大きな話題となったことは記憶に新しい。

ソフトバンクとヤフーはこれまでにも多くの連携を実施。特に近年では、ソフトバンクユーザーが「Yahoo!ショッピング」での買い物をしやすくするなど、Eコマースでの連携に力が入れられてきた。写真は2017年1月16日の「SoftBank 2017 Spring」より(筆者撮影)
ソフトバンクとヤフーはこれまでにも多くの連携を実施。特に近年では、ソフトバンクユーザーが「Yahoo!ショッピング」での買い物をしやすくするなど、Eコマースでの連携に力が入れられてきた。写真は2017年1月16日の「SoftBank 2017 Spring」より(筆者撮影)
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