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 データに成長の活路を見いだすという動きは、NTTドコモに限ったものではない。ヤフーを傘下に収めたソフトバンクにも、同様の狙いがあるようだ。

 ヤフーは現在の川邊健太郎氏が社長に就任した際に、「データの会社にする」と宣言。データを活用したビジネスを拡大していく考えを示している。ヤフー自身は既に9000万人の利用者を抱えており、オンラインでの行動データを多く保有しているが、それに加えて携帯電話事業者であるソフトバンクとの連携が一層密になることで、ソフトバンクが持つ顧客の位置や移動に関するデータ、そして両社が現在力を入れている、QRコード決済の「PayPay」による購買データを活用しやすくなる。

 これによってヤフー、ひいてはソフトバンクは、オンラインからオフラインまでを一気通貫でカバーできるマーケティングデータを保有することになる。それだけに両社は、今後それを積極活用したマーケティングに力を入れていく可能性が十分考えられるだろう。

ソフトバンクが持つ顧客の位置や移動に関するデータと、ヤフーが持つオンラインの行動データ、そしてPayPayが持つ購買データを合わせれば、オンラインからオフラインの実店舗までの顧客行動データを取得できることとなる。写真は2019年5月8日のソフトバンク決算説明会より(筆者撮影)
ソフトバンクが持つ顧客の位置や移動に関するデータと、ヤフーが持つオンラインの行動データ、そしてPayPayが持つ購買データを合わせれば、オンラインからオフラインの実店舗までの顧客行動データを取得できることとなる。写真は2019年5月8日のソフトバンク決算説明会より(筆者撮影)
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事業者によるデータの「囲い込み」に懸念

 データの活用というのは広告やマーケティングだけでなく、様々な分野で今進められているものだけに、大きな顧客基盤を持ち取得できるデータに関しても優位性を持つ携帯電話事業者が、それを活用するというのは妥当な流れではある。一方で懸念されるのは、1つにプライバシー保護への配慮である。

 2018年には米フェイスブック(Facebook)のデータ流出が大きな問題として取り沙汰されたことで、最近はデータとプライバシーの保護の問題が注目されつつある。同じく2018年には欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)が実施されたほか、2019年5月7日に米グーグル(Google)が開いた開発者イベント「Google I/O」でも、プライバシーとセキュリティーに関する施策に多くの時間を割いており、データ活用の広がりとともにプライバシーへの配慮が求められるようになってきている。

 日本でも今後、データを活用した広告やマーケティングなどが本格化していくと考えられるが、その一方で個人情報やプライバシーへの配慮が不十分ならば、フェイスブックのような大きな問題となる恐れがある。ビジネスを拡大するだけでなく、慎重な対応が求められるのは確かだろう。

 そしてもう1つ、懸念されるのがデータの「囲い込み」だ。特に携帯電話の利用者の位置や移動などに関するデータは「虎の子」であり、なおかつプライバシーへの配慮といった観点もあることから、安易に他社に提供できるものではない。だが一方で、データを活用する企業からしてみれば、データが携帯電話大手3社に分断され、さらには2019年10月に新規参入する楽天モバイルが台頭すれば4社に分断されることになる。こうなると大局での動向を知ることができないなどの弊害が生まれてくる。

 加えて、参入企業が乱立している決済サービスを組み合わせれば、個々の企業によるデータの分断化は一層進むことになるだろう。データは規模が小さいと利用価値を生まないだけに、データの分断という問題にどう対処していくか、今後問われることになるだろう。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。