全2693文字
PR

今後も転売ヤーに悩まされる

 ただ一方で出品する側、いわゆる転売ヤーに向けた具体的な策は示されておらず、出品者に向け価格面で高額に設定したらアラートを出す機能などを付与する予定はないという。田面木氏によると、有識者会議の中では「転売にも様々なケースがあり、急激に価格が高騰することで直ちに問題になるという意見はみられなかった」と話す。

 実際、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏がコロナ禍で品薄になったマスクを題材として一次流通と二次流通の関係を分析したところ、メルカリでのマスク取引量はピーク時でも一次流通市場全体の数パーセントにすぎず、市場に与えた影響は軽微だったとのこと。フリマアプリでの高額転売は目立つため注目されがちだが、一次流通に比べるとその数は少なく、イメージ程大きな影響を与えているわけではないということのようだ。

山口氏は2020年1月から4月までのマスクの一次流通と二次流通の関係を分析。メルカリのマスク取り引き量は一次流通の10%未満と少なく、マスク取り引き禁止後も一次流通は回復していないという。画像は2021年1月27日にメルカリが実施した「マーケットプレイスの基本原則」の記者発表会スクリーンショット
山口氏は2020年1月から4月までのマスクの一次流通と二次流通の関係を分析。メルカリのマスク取り引き量は一次流通の10%未満と少なく、マスク取り引き禁止後も一次流通は回復していないという。画像は2021年1月27日にメルカリが実施した「マーケットプレイスの基本原則」の記者発表会スクリーンショット
[画像のクリックで拡大表示]

 ただ一方で、高額出品された品を購入してしまう人が一定数いることも事実であり、山口氏の調査でも、二次流通がなかった場合と比べ4%ほどの人が、高額でマスクを購入した可能性があるとしている。そうしたことからメルカリとしては、まず購入者に向けた注意喚起を追加することを重視したようだ。

 それに加えて田面木氏は一次流通との連携を進め、双方の施策の状況を評価しつつ今後の対応を検討していきたいとしている。ただ出品する側に対する何らかの規制が進まなければ、今や社会問題にもなっている転売ヤーによる少数・限定商品の買い占め行為はなくならない。転売ヤーの横行が続けば、二次流通マーケットプレース全体への不信感へとつながることは否めない。

 安心かつ自由な取引ができるマーケットプレースを支援しながらも、転売ヤーへの対処には明確な回答を打ち出せなかった点を見るに、基本原則を打ち出したとはいえメルカリをはじめとした二次流通マーケットプレース事業者の悩みはまだまだ続くこととなりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。