菅政権による料金引き下げ要請の影響により、今後の業績悪化が見込まれる携帯電話4社。その4社でコンシューマー向けサービスを巡る争いが激しくなり、消費者がその影響を受けるケースが増えつつある。
提携相手がライバルになってしまった「dデリバリー」
2021年2月1日、NTTドコモが「dデリバリー」を2021年5月1日午前2時に終了すると発表し、話題となった。
dデリバリーはスマートフォンなどで利用できるフードデリバリーサービスで、2014年に開始した古参サービスの1つ。「dポイント」が利用できるなどNTTドコモのサービスと連携が図られており、同社のユーザーを中心に拡大を進めてきた。
フードデリバリーサービスは新型コロナウイルスの感染拡大以降、緊急事態宣言などで外出自粛の傾向が強まったことで大きく伸びており、dデリバリーもその例に漏れない。その分新規参入が増えて競争は激化しているのだが、フードデリバリーが盛り上がっているタイミングでdデリバリーを終了して後継サービスも提供しないというのは、消費者からしてみれば釈然としない部分があるのも確かだろう。
だが業界動向を考慮すればdデリバリーが終了する理由は明白であり、終了も時間の問題とみられていた。そもそもdデリバリーはフードデリバリー大手の出前館と提携して展開しているサービスであり、その出前館は2020年にメッセンジャーアプリ大手のLINE社の傘下企業となっている。
そしてLINE社は、ヤフーなどを有するソフトバンク傘下のZホールディングスと2021年3月に経営統合する予定だ。統合後の企業の株式はソフトバンクと、現在のLINE社の親会社である韓国NAVER(ネイバー)が同率で保有することとなるが、ソフトバンクの連結対象となることからLINE社は実質的にソフトバンクの傘下に入ることとなる。
その結果NTTドコモにとって提携当初はフラットな独立系の企業だった出前館が、LINEを経由してライバルのソフトバンク傘下企業となってしまったことになる。それゆえNTTドコモとしては、競合となってしまった出前館と手を組み続けるのは得策ではないと判断し、dデリバリーを終了させるに至ったものとみられる。