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 メッセンジャーアプリ「LINE」を提供するLINE社が、中国のグループ会社から日本国内の個人情報にアクセスできる状態にあったことが、とりわけ行政に大きな波紋をもたらしている。行政サービスのデジタル化に力を入れていたLINE社と、LINEの活用でデジタル化を推し進めようとしていた行政の双方に大きな影響を与えることになりそうだ。

中国から個人情報にアクセスできる可能性、行政が問題視

 2021年3月17日、メッセンジャーアプリ「LINE」の個人情報管理に不備があるといくつかのメディアで報道されて話題となった。とりわけ注目されたのは中国にあるLINE社の関連企業から、日本のLINE利用者の個人情報にアクセスできる状態であったことである。

 同日にLINE社が公表したプレスリリースによると、LINE社は中国の子会社や孫会社、業務委託先の企業などを通じて開発業務を実施。他にもLINE社の子会社LINE Fukuokaの外部委託先で一部の公開コンテンツや、トークの「通報」機能で通報されたテキストのモニタリング業務をしているという。

 LINE社は一連の個人情報管理に関する問題を受け、2021年3月23日に記者会見を実施。一連の問題に関して謝罪するとともに、その経緯と今後の対策について説明した。写真は同会見より(筆者撮影) LINE社は一連の個人情報管理に関する問題を受け、2021年3月23日に記者会見を実施。一連の問題に関して謝罪するとともに、その経緯と今後の対策について説明した。写真は同会見より(筆者撮影)
LINE社は一連の個人情報管理に関する問題を受け、2021年3月23日に記者会見を実施。一連の問題に関して謝罪するとともに、その経緯と今後の対策について説明した。写真は同会見より(筆者撮影) LINE社は一連の個人情報管理に関する問題を受け、2021年3月23日に記者会見を実施。一連の問題に関して謝罪するとともに、その経緯と今後の対策について説明した。写真は同会見より(筆者撮影)
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 そうした中でも特に問題視されたのは、開発業務を手掛けるLINE Digital Technology (Shanghai) Limitedだ。同社の一部の開発業務において、リリース時の検証や不具合が発生した時の原因を究明するため、モニタリング対象者のトーク内容など一部の情報にアクセスできる権限があったとみられる。そこでLINE社は2021年2月から3月にかけて、セキュリティーレベルを高めるためこれらデータへのアクセス権限を削除して中国からの個人情報アクセスを遮断。2021年3月23日には中国でのコミュニケーションに関連する業務も全て終了したとしている。

 ただどのような経緯があるにせよ、海外から国内のLINE利用者の個人情報などにアクセスできる状態であったことは確かで、しかもそれが中国の企業だったことが大きな問題として捉えられたのだろう。なぜなら中国では2017年に「国家情報法」が施行され、中国企業は政府から要請があればそれに協力することが義務付けられており、もし今回対象となった会社が中国政府から要請を受けた場合、中国政府に日本人の個人情報が取得されてしまう可能性があったからだ。

 一連の問題を受けて素早い反応を見せたのが行政である。実際、総務大臣の武田良太氏は2021年3月19日の記者会見で、総務省がLINEを使って実施していた採用活動や意見募集などの運用を停止する予定だとした他、LINEを活用している地方公共団体にも2021年3月26日までに、利用の現状を報告するよう依頼するとしている。

 さらに総務省は同日、一連の問題についてLINE社に対し、電気通信事業法に基づきユーザーの利用者情報の管理の状況などの報告を求めたとしている。こうした動向を見れば、行政側がこの問題を非常に重く受け止めていることが分かるだろう。