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 ソフトバンクは2021年10月18日より実施されていた「2021世界体操・新体操選手権北九州大会」に協賛し、テレビ朝日に映像技術で協力したと発表した。自由視点映像や3Dアバターの作成など新しい映像体験に加え、映像を低遅延で配信するソリューションなども提供。同様の取り組みは過去、5G(第5世代移動通信システム)の実証実験などでいくつか見られたものなのだが、その中身には変化が表れている。

無人AIカメラの新体操映像を低遅延で会場に配信

 2021年10月に福岡県北九州市で開催された「2021世界体操・新体操選手権北九州大会」(体操:2021年10月18〜24日、新体操:10月27〜31日)。同大会に協賛していたソフトバンクは2021年11月5日、同大会を放映したテレビ朝日に提供した映像技術に関する報道関係者向け説明会を実施している。

 同社の説明によると、技術提供していた要素は大きく3つあるとのこと。1つは会場内の人に向けて試合映像を配信する技術で、具体的には「AI自動追尾カメラ」と「超低遅延配信」を組み合わせたものだ。

 AI自動追尾カメラとは、カメラマンの代わりにAIを活用することで自動的に選手を追尾して撮影する無人のカメラである。これが活用されたのは新体操の競技会場だ。新体操の団体競技では選手が集まったり、ちらばったりすることが多い。そうしたことからAI自動追尾カメラは選手の動きに合わせて追尾するだけでなく、選手の位置がばらけた場合は自動でズームアウトするなどして、全ての選手の動きを捉えられるよう学習させている。

世界新体操で活用された「AI自動追尾カメラ」の撮影映像。AIが選手の動きを判別し、選手の位置に応じて自動的にカメラの向きやズームを自動的に変え、撮影しているという。写真は2021年11月6日に実施されたソフトバンクの映像技術に関する説明会より(筆者撮影)
世界新体操で活用された「AI自動追尾カメラ」の撮影映像。AIが選手の動きを判別し、選手の位置に応じて自動的にカメラの向きやズームを自動的に変え、撮影しているという。写真は2021年11月6日に実施されたソフトバンクの映像技術に関する説明会より(筆者撮影)
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 このカメラは会場の3カ所に設置されており、利用者は客席からタブレットを通じ、3台のカメラの視点を自在に切り替えて映像を楽しめる仕組みを整えていたという。それらの映像配信をより快適に視聴できるようにするために導入されたのが、超低遅延配信に関する技術だ。

 こちらは映像のエンコードや配信、そして端末上でのデコードやレンダリングを高速化する独自の技術を採用することにより、遅延を0.1〜0.3秒と非常に小さく抑える仕組み。通常のIP映像配信で発生する数十秒程度の遅延に比べると、大幅に抑えられているという。

 ただ今回は会場内での配信ということもあって、配信時にインターネットを経由しなかった。インターネットを経由すると180〜200ミリ秒程度遅延が増えるという。また無線通信にも5Gではなく、Wi-Fiを使っていた。だが無線部分を5Gに変えても体感的に遅延はほぼ変わらないレベルとのことで、いずれにしても従来と比べれば大幅に遅延を抑えた映像配信を実現したのは確かなようだ。

会場内のタブレットに向けた超低遅延の映像配信は、映像のエンコードや配信、デコードなどで独自の仕組みを用いることで実現しているという。写真は2021年11月6日に実施されたソフトバンクの映像技術に関する説明会より(筆者撮影)
会場内のタブレットに向けた超低遅延の映像配信は、映像のエンコードや配信、デコードなどで独自の仕組みを用いることで実現しているという。写真は2021年11月6日に実施されたソフトバンクの映像技術に関する説明会より(筆者撮影)
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