5Gで企業のデジタル化が進むと言われて久しいが、商用サービス開始から2年が経過してもなお、企業の5G活用は実証実験レベルにとどまるものが大半で、現場での活用があまり進んでいない。企業が5Gを本格活用する上で不足している要素は一体何なのだろうか。
実証実験は活況な5Gの法人活用
5Gの商用サービスが始まっておよそ2年が経過した。かねて5Gは、遠隔操作などに役立つ低遅延や、IoTの活用を進める多数同時接続などの機能を持つことから、どちらかといえばコンシューマー向けよりも企業での活用のほうが注目を集めてきた。
それだけに、5Gの企業活用に向けた取り組みは活発に進められている。とりわけ日本では少子高齢化による労働人口の減少が大きな社会課題となっているだけに、作業の自動化や遠隔作業など、5Gの性能を生かしたデジタル化ソリューション開拓に取り組む企業や自治体は増えており、導入に向けた実証実験は盛んに進められているようだ。
2022年に入って筆者が取材した中でも、携帯電話事業者のパブリックな5Gネットワークだけでなく、ローカル5Gなども活用した企業や自治体の様々な取り組みがみられた。例えば2022年1月17日には、コニカミノルタとNECがローカル5Gを活用した2030年の工場生産の姿を示す「未来ファクトリー」の取り組みの一環として、工場で用いられるAGV(無軌道型無人搬送車)の高効率自動制御システムを共同開発したことを明らかにしており、コニカミノルタの研究開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」でその展示も開始している。
2022年2月9日にはKDDIが、自動運転技術を手掛けるティアフォーや川崎重工業などと、5Gを活用した自動配送ロボットの公道配送実証を実施している。これはドライバー不足が課題となっているラストワンマイル配送の効率化に向けた取り組みで、PPP-RTK方式の高精度測位サービスを用いた、自動配送ロボットによる配送を実施するというもの。このロボットには遠隔監視や見守りなどの機能も備わっており、ロボットの運行だけでなく遠隔監視などにも5Gが活用されているという。
また2022年2月4日には、ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートが、5Gイノベーションの街中実装・事業化を推進する「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」の第1期採択スタートアップ4社を発表している。これは東京都が推進する「5G技術活用型開発等促進事業」で採択された1社のサムライインキュベートが、5Gの社会実装を進めるスタートアップの取り組みを最大3年間という長期にわたって支援するものになる。
それゆえ採用されたプロダクトはいずれも5Gネットワークの高速大容量や低遅延といった特徴を生かしながらも、具体的な社会実装が見込めるものとなっている。具体的には、5Gの低遅延を生かしてロボットを遠隔操作しラストワンマイルの配送を担うシステムや、5Gの高い性能を生かしてクラウド処理を活用し、XRを活用した観光周遊体験を低コストでより多くの観光バスに導入する取り組みなどだ。