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時間がかかるARの普及、投資を長期間継続できるか

 ただこれまでのARコンテンツに関する動向を振り返るに、XR Cityの利用を拡大させるには課題が少なくないというのが正直なところでもある。その1つは、多くの人が継続的に楽しめるARコンテンツがまだ少ないことだ。

 NTTドコモでもXR Cityのサービス開始に合わせて、多くの企業と連携しARコンテンツの充実を図っているが、多くの人が継続的に楽しむには数が少ないとも感じるし、謎解きなどは1度プレーし終えてしまうと以後楽しめないなどのデメリットもある。コンテンツの充実、ひいてはキラーコンテンツの登場はXR Cityの利用を拡大させる上で欠かせないものとなってくるだけに、いかに多くのパートナーを集め魅力的なコンテンツを提供できるかは大きな課題となってくるだろう。

XR Cityではサービス開始当初から幅広いコンテンツが用意されているが、継続的にその場所を訪れ、楽しんでもらうにはコンテンツ面での工夫も求められる
XR Cityではサービス開始当初から幅広いコンテンツが用意されているが、継続的にその場所を訪れ、楽しんでもらうにはコンテンツ面での工夫も求められる
(出所:NTTドコモ)
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 そしてもう1つの課題は、現在のタイミングでARサービスプラットフォームを展開するのには、やや早過ぎる印象を受けてしまうことだ。足元の環境を見ると、確かにARに関する技術の整備は進んできており、米Niantic(ナイアンティック)の「Pokémon GO(ポケモン GO)」など、ゲームを主体としてARコンテンツの利用も広まってきてはいる。

 ただゲーム以外で多くの人がARコンテンツを日常的に利用しているかというと、必ずしもそうとは言えない実情があり、現在もチャレンジが続いているというのが正直なところ。IT関連のサービスは時代を先取りし過ぎると成功に結び付かないケースが多いだけに、XR Cityもやや時代を先取りし過ぎてしまっていることがデメリットとなり得る印象を受けてしまうのだ。

 しかもVRの世界を振り返るならば、米Meta(メタ)に買収されたかつての米Oculus VR社がヘッドマウントディスプレー型のVRを始めてから、メタバースへの注目でVRが脚光を浴びるまで10年近い歳月を費やしている。現在のタイミングでARサービスに取り組むならば、それくらい長い期間を見据えた大規模な投資が求められるだろう。

 それだけにXR Cityがスマートグラスの時代に成功を得る上では、NTTドコモが今後AR技術の浮き沈みに左右されることなく長期間、継続的にサービス開発に投資し続ける姿勢が求められるだろう。ここ最近多くのサービスを終了させ整理を進めてきた同社だけに、ARに対してそれだけの投資を続けられるのか、本気度が問われることは間違いない。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。