ここ最近急速な再編が相次いだフードデリバリーサービスだが、その再編により大きな動きのあった企業の1つが、米DoorDash(ドアダッシュ)に買収された、「Wolt」を展開するフィンランドのWolt Enterprises(ウォルトエンタープライゼス)だ。この買収により、日本ではDoorDashではなくWoltを主体として事業を展開していくことが明らかにされた。その判断理由はどこにあるのか。今後の日本市場における取り組みなどを含め、日本法人のWolt Japan代表である野地春菜氏に話を聞いた。
先行展開するブランドへの一本化を選択
日本だけでなく、世界的にもここ最近大きな再編が相次いでいるフードデリバリーサービス。その再編によって、日本での事業にも大きな影響があったのが「DoorDash」を展開するドアダッシュと、「Wolt」を展開するウォルトエンタープライゼスである。ドアダッシュは2021年11月にウォルトエンタープライゼスを買収すると発表した。
その買収自体は2022年6月に完了したのだが、注目されたのは日本での事業統合の行方である。ウォルトエンタープライゼスは2020年3月に、ドアダッシュは2021年6月に日本へ進出していたことから、双方の事業をどのような形で一本化していくのかが注目されていた。
結果、日本では先行して展開しているWoltを継続、DoorDashを終了することで一本化が図られ、DoorDashのみ進出していた埼玉県にもWoltが進出する形でサービスの穴を埋めるに至っている。だが買収する側ではなく、買収される側のブランドが残ったというのは気になるところだ。
その理由について野地氏は、Woltのほうが先行してサービスを展開していたことを挙げている。実際、日本と同様両社が進出していたドイツでもWoltにサービス統一が図られているそうで、Woltのみサービス展開している他の21カ国についても、Woltがサービスを継続しているとのこと。一方でDoorDashが展開している米国など4カ国はそのままDoorDashがサービスを展開しており、既に市場に浸透しているサービスを優先したほうがメリットが大きいとの判断がなされたようだ。
そうしたことから日本ではDoorDashのサービス利用者や、配送を担うパートナーなども全てWoltに移行され、DoorDashのサービスは全て終了させているとのこと。それはコンシューマー向けのサービスだけでなく、ドアダッシュが力を入れていた、飲食店のデリバリーサービスの配送部分を担う「Storefront」も終了するという形が取られている。