大盤振る舞いのポイント還元施策で顧客を引き付けてきた、携帯電話4社のいわゆる“経済圏”ビジネス。だが2022年の動向を見るとそのポイント還元率が低下するケースが多く見られ、お得さだけでは顧客を引き付けられなくなりつつある印象だ。2023年、経済圏ビジネスの拡大には何が求められるのだろうか。
終了相次ぐeコマースのポイント高還元策
携帯電話サービスで培った多くの顧客基盤を活用し、金融・決済やコンテンツサービス、電力など幅広いサービスを提供して顧客との接点を拡大し、自社系列のサービスに消費者を囲い込む、携帯電話各社のいわゆる「経済圏」ビジネス。主力の携帯電話事業が頭打ちとなる中、携帯電話各社はいずれも経済圏ビジネスに重点を移しつつある。
その経済圏ビジネスで、これまで各社が重視してきたのがポイントプログラムである。携帯電話各社は何らかのポイントプログラムを自社で保有したり、他社と提携したりして提供している。自社サービスを利用するとポイントがたくさん還元されることを武器として、自社の経済圏に顧客を取り込むことに注力してきたのだ。
かつてポイント高還元率競争が過熱したスマートフォン決済がその代表的な事例といえるが、もう1つ良く知られている事例がeコマースである。自社系列のサービスを多く利用することでeコマースでのポイント付与率がアップする、楽天グループの「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)に類する仕組みの工夫に、各社が力を入れてきたからだ。
だが2022年は、そのeコマースのポイント付与率に多くの異変が起こった年でもあった。象徴的な事例の1つが、KDDIが2022年7月に開始した「au PAYマーケット」の「買い得メンバーズ」。それまで提供していた「お買い物特典プログラム」と比べると、クレジットカード「au PAYカード」を利用して決済したときのポイント付与率が4.5%下がったり、利用者によっては10%近くポイント付与率が下がったりするなどの変更が加えられた。
またソフトバンク系のヤフーが運営する「Yahoo!ショッピング」においても、「PayPayモール」との売り場統合に伴い2022年10月12日にポイント付与施策が大幅に変更された。ソフトバンク回線利用者が日曜日に「PayPay」など指定の支払い方法で買い物をすると10%のポイント還元が受けられるキャンペーン「ソフトバンクスマホユーザーなら毎週日曜日は+10%」などが終了。新たにPayPayで支払えば誰でも5%還元が受けられる施策を開始しているが、高還元を狙っていたユーザーなどから「改悪」との声が少なからず出ていた。