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 Zホールディングス傘下のヤフーとLINE社が映像配信サービスの再編に大きく動いている。具体的にはライブ配信の「LINE LIVE」と、映像配信の「GYAO!」を終了させ、「LINE」上で提供するショート動画プラットフォーム「LINE VOOM」に注力する方針を打ち出した。高い知名度を持つ2つのサービスを終了させる理由はどこにあるのだろうか。

知名度の高い2つのサービスを相次いで終了

 スポーツ動画配信の「DAZN」が2年連続での値上げを発表するなど、2023年早々から大きな動きが相次いでいる映像配信サービス。中でも大きな動きを見せているのが、ヤフーやLINE社などを傘下に持ち、ソフトバンクの実質的傘下企業であるZホールディングスだ。

 というのはZホールディングス傘下の企業が、映像配信サービスの終了を相次いで打ち出したからである。その1つは2023年1月13日、LINE社が提供している「LINE LIVE」の終了を発表したこと。LINE LIVEは、個人などのいわゆる「ライバー」がリアルタイムで映像配信をしながら視聴者とコミュニケーションするライブ配信サービスの1つで、国内では老舗のサービスでもあるだけに、その終了には驚きがあった。

「LINE LIVE」は2015年より提供開始され、2016年にはLINE ID所有者であれば誰でも配信できる現在のスタイルへとリニューアル。長くサービスを提供してきたが、2023年に終了することとなった。写真は2016年8月4日、LINE社内にて筆者撮影
「LINE LIVE」は2015年より提供開始され、2016年にはLINE ID所有者であれば誰でも配信できる現在のスタイルへとリニューアル。長くサービスを提供してきたが、2023年に終了することとなった。写真は2016年8月4日、LINE社内にて筆者撮影
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 だがより大きな驚きをもたらしたのは、ヤフー傘下のGYAO社が運営する「GYAO!」の終了であろう。Zホールディングスとヤフーらは2023年1月16日に、2023年3月31日をもってGYAO!を終了させることを発表したのである。

 GYAO!は2005年よりUSEN(現USEN-NEXT HOLDINGS)が提供していた「GyaO」がルーツで、2009年にヤフーの「Yahoo!動画」と統合し、現在までサービス提供を継続している国内映像配信サービスの老舗だ。

 それだけにSNSなどでは、古くからインターネットになじみのあるユーザーなどから終了を惜しむ声が少なからず上がったほか、突如終了が打ち出されたことで、一部のテレビ見逃し配信作品は終了までに全話の配信が間に合わなくなるなど、やや混乱も起こっているようだ。

「GYAO!」のWebサイトより。10年以上にわたってサービス提供してきたGYAO!だが、こちらもLINE LIVEと同様に2023年の終了が打ち出された
「GYAO!」のWebサイトより。10年以上にわたってサービス提供してきたGYAO!だが、こちらもLINE LIVEと同様に2023年の終了が打ち出された
(出所:GYAO)
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 両サービスの終了の理由は、いずれも「LINE VOOM」に注力するためだとされている。LINE VOOMはメッセンジャーアプリの「LINE」上で利用できるスマートフォン向けのショート動画プラットフォーム。LINEの「タイムライン」を2021年11月にリニューアルしたものだ。ちなみにLINE LIVEの終了に伴い、LINE VOOMには2023年度中にライブ配信・視聴機能も追加される予定だという。

LINE社のプレスリリースより。「LINE VOOM」は「LINE」のタイムラインを2021年にリニューアルしたもので、LINEのコミュニケーションを活用したショート動画プラットフォームとなっている
LINE社のプレスリリースより。「LINE VOOM」は「LINE」のタイムラインを2021年にリニューアルしたもので、LINEのコミュニケーションを活用したショート動画プラットフォームとなっている
(出所:LINE社)
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 だが終了させるLINE LIVEとGYAO!はともに高い知名度を誇るサービスであり、その利用者も少なくない。それだけになぜ、Zホールディングスはこれら2つのサービスを終了させ、LINE VOOMに集中するに至ったのかは気になるところだ。