携帯電話4社の中で金融・決済事業にやや出遅れている印象のあるNTTドコモ。だが2022年末には「dスマートバンク」でデジタル銀行口座サービスを開始し、決済でも「dカード」「d払い」など複数サービスの一体的なマーケティングを推し進めるなど、挽回に向け強化を図る動きが相次いでいる。それらの施策は功を奏するだろうか。
不足する銀行口座サービスを三菱UFJとの連係で実現
携帯4社が顧客基盤を活用し、幅広いサービスを提供して顧客を囲い込む、いわゆる「経済圏」のビジネスを強化し、競争が激化していることはこれまで本連載で触れた通りだ。その経済圏ビジネスの中でも、特にここ最近各社が力を入れているのが金融・決済の分野である。
楽天グループはもともと「楽天銀行」「楽天カード」などで金融・決済事業に強みを持っており、KDDIも2019年に中間持ち株会社の「auフィナンシャルホールディングス」を設立し、傘下の金融・決済事業者を統括してこの分野を強化。ソフトバンクもスマートフォン決済「PayPay」に金融・決済サービスのブランドを統一化するとともに、PayPay社を子会社化し金融事業を事業の中核に据える方針を打ち出している。
各社がこの分野で競争力強化に取り組む中にあって、やや出遅れている印象があったのがNTTドコモである。NTTドコモは「dカード」で約1600万の契約数を誇るなどクレジットカードの分野では強みを持っており、決済サービスに欠かせないポイントプログラムも独自の「dポイント」を持つ。ただ、携帯4社のグループの中では唯一銀行を保有していないなど、とりわけ金融事業を中心として弱みがあったことは確かである。
そうしたことからNTTドコモはここ最近、金融・決済事業の強化に向けて様々な動きを見せている。その1つとなるのが、2022年12月12日にサービスを開始した「dスマートバンク」だ。
これはNTTドコモが三菱UFJ銀行と提携して提供するデジタル銀行口座サービスである。三菱UFJ銀行とAPIで連係することにより、スマートフォンアプリ上で口座を開設したり、残高を確認したりできる仕組みを備えている。銀行を持たないNTTドコモが、金融サービスの軸となる銀行口座サービスを提供するための切り札というべきサービスだ。
主な特徴の1つは、銀行口座の預金を生活資金用の「おサイフ」と貯蓄用の「貯金箱」に分けて管理できること。さらに資産運用サービス「THEO+ docomo」を用いた「はたらく貯金箱」を用いることで資産運用にも手軽に挑戦できる仕組みを備えている。そしてもう1つの特徴は、dカードやNTTドコモの携帯電話サービスの引き落とし口座、そして給与や年金の受取口座に設定することで、年間最大660ポイントのdポイントが入手できる点にある。利便性とお得さで利用者を増やしたい狙いがあるといえそうだ。