公正取引委員会は2023年2月9日に「モバイルOS等に関する実態調査報告書」を公開。スマートフォンのOSやアプリストアでシェアを二分する米Apple(アップル)と米Google(グーグル)に対し、十分な競争が働いておらず健全な競争環境の整備が必要だと評価した。今後法規制に向け動きが進む可能性も考えられるが、消費者目線でいえば慎重さが求められる。
OSやアプリストアは寡占で競争不十分
世界的に多くの人が利用するようになったスマートフォンで、国家をも動かす問題となっているのが、プラットフォーマーによる市場寡占の問題である。スマートフォンのOSはアップルの「iOS」とグーグルの「Android」が市場を二分しており、各OSに対応したアプリを配信するいわゆるアプリストアに関しても、それぞれ「App Store」「Google Play」の寡占状態にある。
そのため競争が十分働かず、各レイヤーで競合が不利な扱いを受けることが少なからずあるなど、問題が多く指摘されてきた。具体的な事例としてこれまでにも、アプリストアにおける手数料の高止まりや、そのアプリストアやWebブラウザーなど、自社製アプリの優遇などが挙げられてきた。
そうした寡占がもたらす競争上の問題に対して世界的にも国家が動く事態となっており、日本でも内閣官房のデジタル市場競争本部事務局が「デジタル市場競争会議」でこの問題の議論を進めてきた。それと同時に公正取引委員会もモバイルOSなどの実態調査を進めており、2023年2月9日に「モバイルOS等に関する実態調査報告書」として結果を公表している。
その内容を見ると、やはりアップルとグーグルに厳しい評価を下している部分が多いようだ。まず両社の寡占状態にあるOSとアプリストアに関しては、いずれも「十分な競争が働いていない状況」だと厳しく指摘している。
またアプリやスマートフォンの周辺市場に関しても、2社はOSやアプリストアを提供するプラットフォーマーでありながら、自らアプリなども提供しており他の事業者と競合する二重の立場にあると評価。その上で、プラットフォームを持つことで他社にスマートフォンの機能へのアクセスを一部制限したり、審査などで不利に扱ったり、自社アプリのプリインストールを強制してアンインストールできないようにしたりするなどの行為が、独占禁止法上問題になる恐れがあるとしている。