戦後、都市から排除された木造建築に、再び注目が集まっています。木造関連の書籍も出版ラッシュ。東京・神保町の建築専門書店「南洋堂書店」の関口奈央子氏が、「木造復権」をテーマにしたお薦めの近刊3冊を紹介します。

 なぜか話の流れで、神保町のフリーペーパー誌の中で建築紹介をすることになってしまった。毎日ガチで建築と向き合っているけれど、主に印刷物とだし、生粋の江戸っ子の多いこの街で私は「外地」の人間だ。これじゃ引きつった笑顔の写真を撮られ、毛玉だらけのセーターと無知をさらすだけだ。できうる限りの下調べと、肩肘張らないコメントでなんとか切り抜けよう……。

 神保町近辺にある建築物の歴史を調べるにつれ、明暦の大火・関東大震災・東京大空襲という「歴史に刻まれた悲劇」と、それを機に発展した都市計画や建築材料などの「建築イノベーション」の直接的な結び付きを痛感する。幸い、前向きな理由で「建築イノベーション」が起こる現代は、特に「木造復権」の流れが顕著だ。そういうわけで、今回は「木造建築の運命」を考えてみる3冊。まずは、伝統的な木造建築について考えるきっかけとなるこの本から。

「登録有形文化財」

「登録有形文化財 保存と活用から見える新たな地域のすがた」の表紙
「登録有形文化財 保存と活用から見える新たな地域のすがた」の表紙

 「残った」ものと「残らなかった」ものの違いをどれだけ考えても、それぞれに事情があるし何とも言いがたい。でもそれが、「残したい」ものであるならば話は変わってくる。「登録有形文化財」と聞いても、「『世界遺産』とか『国宝』とか『重要文化財』とか、なんか沢山あってよく分からない」、「『登録有形文化財』ってたまに聞くけど、数が多すぎて(※総数は1万件以上)、あまり重要性を感じない」……など、微妙な印象を抱く人も多そうだ。

 ところが全国を訪ね歩いてきた著者(佐藤剛弘)による本書「登録有形文化財」を読めば、その奥深さに驚くだろう。城やタワーのような「存在感があるやつドーン!」な建築だけでなく、住宅はもちろん火の見櫓(やぐら)や遊郭、観覧車まで幅広くカバーする。

 その懐の深さの理由は、「国などが主導して所有者に対し、『この建物は価値があるので、文化財にしますよ』と宣言する『指定』」とは違い、「登録」は、持ち主が国に申請し許可されたものが登録されるというボトムアップによる文化財だからだ。

 ジャンルごとに登録建造物を丁寧に紹介する本書は、地域の愛着や誇りの象徴となる登録有形文化財が街づくりのトリガーにもなり得るし、何より日本の財産なのだと教えてくれる。

著者:佐滝剛弘
判形:四六判
ページ:352ページ
出版社:勁草書房
発売:2017年10月
定価:本体2700円+税