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 異常気象や自然災害によって、人と自然環境の密接なつながりを意識させられることが増えた昨今。東京・神保町の建築専門書店「南洋堂書店」の関口奈央子氏が、今月は建築と「自然エネルギー」をキーワードに書籍4冊を紹介します。1冊目は「環境デザインマップ 日本」(建築設備綜合協会、環境デザインマップ編集委員会編著)。環境問題に取り組む建築を知ることで、環境技術に目を向けます。

 「何かおかしい」と足元に異常を察知し、あわてて飛びのいた。同系色でカモフラージュされているが、床の素材が一部だけ微妙に違う。きっと落とし穴に違いない。大昔に部活で泣くほどやらされた反復横跳びが、まさかこんなところで生きるとは。しかしなんで商業施設の入り口に落とし穴が?と振り返って目を凝らすと、何か書いてある。「この床は踏むと発電します」。……これ、むしろ踏まなきゃいけないやつだ。

 2015年の「パリ協定」で、気候変動に対し世界規模で対策を行うことが決められた。日本は2030年度までに「温室効果ガス排出量」を13年度比で26%削減することを目標に掲げ、「再生可能エネルギー」(太陽光、風力、地熱などの温室効果ガスを排出しないエネルギー。以下、再エネ)を「主力電源化」する国策を打ち出した。2020年度に「電力システム改革」の第3段階である「発送電分離」の実施が予定されているものの、電力システムを再生エネ仕様にすることは急務だ。自然災害が増え、環境問題は避けて通れないと実感する機会の多い今、「自然エネルギー」について考える4冊。

「環境デザインマップ 日本」

「環境デザインマップ 日本」の表紙
「環境デザインマップ 日本」の表紙

 「気候変動対策」の主役である再エネは良いことづくし。まず、地球環境に優しい。そして企業はその取り組みをアピールすることで、消費者に良いブランドイメージを植え付けることができる。加えて、再エネの価格は過去7年間で75%下がっており(国際再生エネルギー機関、2017年)、さらに下がり続けることが予測されている。

 アップル社は今年4月、43カ国にある自社施設の電力をすべて再エネで賄う目標を達成したと発表した。そんな話を聞いたら、世界的なエネルギー転換の動きに日本はついていけるの?と不安になってくる。

 政策面はさておき技術立国ニッポンが技術面で遅れをとっているはずもなく、CO2排出量の内訳で結構な値を占めている建設・建築分野においても環境技術開発が進んでいる。もはや、新しい建築物では再エネ活用は基本中の基本。新しい建築物で「環境配慮」していないものを見かけることの方が少ない。

 本書「環境デザインマップ 日本」は、全国各地にある優れた環境デザインを取り入れた建築作品を紹介するガイドブック。個々の建築が雑誌などメディアで発表されるときには「ほうほう」と興味深く見るけれど、人間の脳は忘れゆくもの。図版だけでなく技術的な話も分かりやすく記されている本書で、改めて一気見する「環境建築」は、なんてバリエーション豊かなのだろう。

 なるほど、エコな設備だけそろえればいいってものでもなく、構造・意匠も重要な役割を担っているのか。太陽光発電、雨水再利用、屋上・壁面緑化、LED照明はすでに誰もが知るエコ技術だから、次なるステップとして低放射率ガラス、ライトシェルフ、コジェネレーションあたりを覚えたい。次から次へ、打ち出の小槌のように出てくる建築の環境技術が目白押しのページをめくりながら、「地球に優しい建築」巡りをしよう。

著者:建築設備綜合協会、環境デザインマップ編集委員会編著
判形:B5判変形
ページ:273ページ
出版社:総合資格
発売:2018年6月
定価:本体1900円+税

関口奈央子(せきぐちなおこ)
東京・神保町にある建築専門書店「南洋堂書店」のスタッフ。今年で勤務13年目になる。「DOCOMOMO Japan News Letter(会報誌)」編集委員。スイスの建築雑誌「werk, bauen + wohnen」特派員。南洋堂書店ウェブ内のコラム「南洋堂日和」で、本と日常を結び付けてつづっている。今回、紹介した本は南洋堂書店ウェブショップで購入できる。