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 日経アーキテクチュアの最新号に掲載した建築物をピックアップ。今号の1枚は、イクマサトシさんが撮影した「小林市新庁舎」です。「建築プロジェクトデータベース」(日経 xTECH有料会員サービス)では、雑誌の発行と連動して最新の建築情報を更新。概要データや写真・図面などを見ることができます。

左が本館(行政棟)、右が東館(議会棟)。本館は、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄骨造の混構造。東館は在来木造。2棟とも組子細工のような木組みでファサードを統一しているが、本館は建具、東館は構造体。デザインや部材寸法が違う(写真:イクマ サトシ)
左が本館(行政棟)、右が東館(議会棟)。本館は、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄骨造の混構造。東館は在来木造。2棟とも組子細工のような木組みでファサードを統一しているが、本館は建具、東館は構造体。デザインや部材寸法が違う(写真:イクマ サトシ)
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(日経アーキテクチュア7月12日号フォーカス建築から)

 組子細工のように細かく木材を組んだパターンが、渡り廊下を挟んで長さ60mにわたり建物のファサードを飾っている。8000本を超える地元の木材を使って建てられた宮崎県小林市の新しい市役所だ。2017年夏の完成後、旧庁舎の解体と外構の整備を経て、今年3月にグランドオープンを迎えた。

 建物は、地上4階建ての本館(行政棟)と、地上3階建ての東館(議会棟)から成る。本館は、柱が鉄骨鉄筋コンクリート造、梁が鉄骨造の建物を木質空間に仕上げたもの。東館は、延べ面積2100m2弱の建物を在来工法の木造でつくった。

 2棟の内外には、木を身近に感じられるような空間が広がる。東側の道路に面した2棟の1階部分には、木質のピロティ空間が続く。そのピロティが一部にまわり込む本館南西側の外壁は、採光・通気用のガラス面と、西日よけの木製ルーバーが交互に雁行して並ぶ。

 霧島連山の北東麓に広がる人口4万5000人弱の小林市は、かつて林業で栄えた。往時の面影はないが、市域の多くは今も森林に覆われている。「林業の再生につながる仕掛けとして、地元の木材を活用する庁舎を目指した」。庁舎の建て替えを担当した同市管財課建築住宅グループの舘下昌幸主幹はそう話す。

 建設に当たり、小林市は2つの目標を設定した。1つは、できるだけ多くの地元の木材を、地元で加工して使うこと。もう1つは、地元の建設会社が施工できる木造とすることだ。この目標を達成するには、木材は一般の製材を使い、在来工法でつくれる木造庁舎を設計する必要がある。

 「東館は、小林市から発信できる独自性の高い木造を追求し、製材による在来工法で成立させた。一方、より規模が大きい本館は耐火構造が求められ、製材による在来木造は困難なので、非木造として木質化した」。そう説明するのは、梓設計アーキテクト部門九州支社設計部の葉村幹樹副主幹だ。14年に小林市が実施した公募型プロポーザルで設計者に選ばれた。

 東館の2階にある議場の大空間では、製材を用いた張弦梁で12.74mのスパンを飛ばしている。建物の外観に現れた組子のような木組みの壁も、製材による構造壁だ。「従来、この規模の木造には大断面集成材を使ってきた。製材で成立させた前例はないのではないか」。構造設計を監修したホルツストラの稲山正弘氏はそう話す。