過放電、過充電の状態が続くと、急速に劣化が進みます。その結果、バッテリーの容量も急速に減ってしまうのです。また、過放電や過充電の状態だと、通常利用時より多くのガスが発生し、これがバッテリー自体を膨らませる原因となります。
過放電や過充電は、メーカーが想定しない使い方をすることで比較的簡単に発生します。例えば、満充電になっても電源に接続したまま充電を続けるような使い方です(後述)。原則として、リチウムイオン電池は「消耗品」扱いで、一度劣化したら廃棄するしかありません。つまり、リチウムイオン電池を内蔵する機器は、バッテリーを交換するしかないのです。また、本体がゆがむほどバッテリーが膨らんでしまったら、それ以上利用するのは危険です。メーカーに修理に出すか廃棄するか、いずれかの選択肢しかありません。
では、モバイルデバイスをどのように使うと、過放電や過充電になってしまうのでしょうか。
過放電とは、電池の容量が少ないときに、まだ電力を出力させようとしている状態です。モバイルデバイスが電池残量ゼロを表示している状態で、さらに使い続けた場合などにこうなります。モバイルデバイスのOSは一般的に、容量がごくわずかに残った状態で、残量をゼロとして表示します。電池残量が本当にゼロになってしまうと電力を出力できないため、動作しなくなります。
リチウムイオン電池に充電された電力は、機器から取り外した状態だとしても、わずかに減っていきます。これを自然放電といいます。内部回路を動作させるため、電源オフの状態でもわずかに電力を消費する機器もあります。当然、長期間放置すると電力がなくなってしまい、過放電状態になります。新品のデバイスのバッテリーがある程度充電されているのは、バッテリーを過放電にしないためです。
過充電は、100%を超えて充電しようとしたときに発生します。基本的には、バッテリー内部の充電コントローラーが、過充電になる可能性があるとバッテリーへの通電を切って充電されないようにします。しかしそれは完全ではなく、少しでも電力が使われると満充電ではないと判断し充電を再開するといったことを繰り返して、結果的に過充電になってしまうケースもあります。もちろん、電池の品質や充電コントローラーの性能などにも依存します。
バッテリーの温度が高いことも、劣化を加速させる要因となります。一般に化学反応は、温度が高くなると反応速度が上がります。このため、温度が高いほど劣化も早く進むのです。高温の場所でモバイルデバイスを使い続けるのは、あまりお勧めできません。