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 前回は日本初のハイレゾリューション(ハイレゾ)のストリーミングサービス「Amazon Music HD」を紹介した。今回はハイレゾ音源の存在意義について考察すると共に、音楽制作に携わる筆者のハイレゾにまつわる体験談を紹介したい。

プロの現場に「ハイレゾ音源」は必要

 人間の耳は約20kHzの音までしか聞こえないのに、「ハイレゾ音源」に意味はあるのか──。

 ハイレゾ音源を語る際に常に論争を呼ぶテーマがこの「20kHz問題」だ。解像度24bitという多くの情報量や48k〜96kHz(サンプリング周波数は96k〜192kHz)以上の高い周波数を記録可能なハイレゾ音源だが、人間の可聴範囲とされる数値を超えたスペックに意味があるのか、との問いかけである。

 実際、本連載でも約5年前に同様のテーマを記事にすると、ソーシャルメディアはもちろん、筆者への直接の連絡も含め、数々の意見が寄せられた。中には攻撃としか思えないような表現を含む言説もあり、この分野には「熱い」人が多いことを思い知った。今回、再度このテーマを取り上げることにちょっとばかりドキドキしている。

ホールなどのモバイル録音の現場では、楽屋に機材を持ち込み、ケーブルを引き込んで24bit/96k〜192kHzで収録する。北欧製のスピーカー「Genelec」やドイツ製のオーディオインターフェース「RME Fireface UFX II」をMacBook Proに接続している
ホールなどのモバイル録音の現場では、楽屋に機材を持ち込み、ケーブルを引き込んで24bit/96k〜192kHzで収録する。北欧製のスピーカー「Genelec」やドイツ製のオーディオインターフェース「RME Fireface UFX II」をMacBook Proに接続している
(筆者撮影、以下同じ)
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 音楽制作業に従事しつつ、録音現場では24bit/96k〜192kHzでの収録を原則とし、これまで国内のハイレゾ配信プラットフォームに多くのハイレゾ楽曲を提供してきた筆者は、胸を張ってハイレゾの存在意義を肯定する。ただ、これを言うと、「プロの現場でハイレゾが必要なのは理解できるが、一般ユーザー向けのプロダクトとして意味があるか」という意見をよく耳にする。

 大いに意味がある。まず、プロの現場でハイレゾが必要な理由は実に明快で、ミックスダウン、エフェクト処理、マスタリング、ダウンコンバートなど、録音後の処理や完パケ(完全パッケージの略で「マスター音源」の意)までのプロセスにおいて、デジタル処理を実施する際に発生する各種のノイズ(量子化ノイズや折り返しひずみ)を低減したり劣化を抑制したりするのに有効だからだ。

 簡単に説明すると、なるべく高いサンプリング周波数で作ったファイルを扱うことにより、デジタル処理によるノイズが発生する作業までの「余裕」を稼ぐことができる。そして、収録から完パケまでの作業過程において24bitで収録した音源を「32bit浮動小数点数」に書き出した上で処理することで、劣化やノイズの発生を最小限に抑制することが可能となる。このあたりは現場での経験則はもちろん、理論的にも裏付けが取れる話だ。