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素材は地域と建築をつなぐ

隈研吾氏(写真:本誌)
隈研吾氏(写真:本誌)
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 「富岡倉庫の改修は、炭素繊維を意匠としてうまく見せることで、建物の耐震性能を向上させるだけでなく、空間の価値もプラスに変える補強となるだろう。

 ディテールにもこだわった。チタンを木と組み合わせ、補強柱は鉄のムク材を使用する計画だ。チタンを使った接合部などは、構造家の江尻憲泰さんが非常に奇麗な形状を考えてくれた。

 富岡は繊維の街なので、計画当初から繊維を主役にしたいと考えていた。建築というのは、出来上がった物質だけでなく、生産のプロセスで地域の小さな産業、つまり『マイクロエコノミー』を活性化できるという大きなポテンシャルを持っている。これからは経済のシステムのなかで、建築の役割が、変わっていかなくてはいけない時代になっている。

 新しい材料を使うのは、見た目に面白いものをつくるためだけではない。それ以上に、地域と建築をつなぐ仕掛けづくりにまで持っていけることに意義がある。

 また、設計者が地域を支えるスタンスを見せていると、波及効果もあると思う。周りから、『こんな面白い素材がある』『この素材もうまく見せられないか』と、素材や技術が集まってくるからだ。

 とはいえ、素材をきっかけとした産業活性化の仕掛けをつくるには、まず現地に設計のスタッフが常駐することが大切だ。どのような素材があるか、現場でどう施工するかを探るためにも、地元との関係づくりは欠かせない」(隈研吾氏、談)

 未知の素材への挑戦は、隈氏にとって「新しいデザイン」以上に、「新しい産業創出」「新しい人脈づくり」という意味があるようです。

 特集で取り上げた他の建築設計者、エンジニアたちが新素材に対してどんな意識を持っているかは、それぞれの記事をお読みください。

<特集目次>

Pert1 コンクリート 技術の複合でじわり進歩

Pert2 繊維素材 ひも状補強材の軽さに脚光

 そして、この特集にやや関連する話題をもう1つ。

 今号の建築日和「勝手に富岡建築ツーリズム」では、タイトルのとおり、富岡市内の6つの注目建築をめぐるガイドマップを勝手に描きました。

(イラスト:宮沢 洋)
(イラスト:宮沢 洋)
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 これだけ見ごたえのある建築を1日で回れる都市は珍しいと思います。ぜひ休日に、家族や建築好きの友人と訪れてみてください。