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 世界遺産・首里城の火災から3カ月がたちました。歴史的に価値の高い建物をいかに守るべきか、防火の在り方がいま改めて問われています。日経アーキテクチュア2020年2月13日号の特集では、「首里城炎上の教訓」と題し、なぜ大規模火災は防げなかったのかを検証するとともに、火災や文化財の専門家の意見を交えながら、教訓を探りました。

(写真:沖縄タイムス/共同通信イメージズ)
(写真:沖縄タイムス/共同通信イメージズ)
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 19年10月31日未明に発生した首里城火災では、中心施設7棟が全焼しました。木造で復元した正殿から出た炎が、鉄筋コンクリート造の建物に次々と燃え移り、約11時間も燃え続けました。特集では、本誌が那覇市消防局に情報公開請求して入手した「消防活動報告書」などを基に、火災当時の消防隊員の様子を克明に再現しました。

 詳しくは本誌をご覧いただきたいのですが、報告書からは火災現場の過酷な状況が浮かび上がります。注水後も火災の勢いは止まらず、炎が渦巻き状に立ち上がる「火災旋風」がたびたび発生。「猛烈な輻射熱」の影響で消防隊は何度も一時避難を強いられました。「放水銃の蓋が開かない」「ホースが焼損する」といった事態も発生し、消火活動は困難を極めました。

 首里城火災は、木造の復元建物である正殿北東部の部屋が起点だとみられていますが、出火原因は特定できていません。ただ、内部出火への備えに弱い面があったことは否めないでしょう。本誌の取材に対し、火災や文化財に詳しい専門家の多くが、早期発見と初期消火の重要性を指摘しています。

 現在、首里城再建を巡る議論が本格化しています。文化財や建築の専門家らが参画する内閣府の技術検討委員会が始まり、防災対策の強化について話し合う予定です。再発防止のためには、大規模延焼を防げなかった原因を究明し、その教訓を反映していくことが欠かせません。

 首里城火災は、全国の文化財の管理者にとっても、決して人ごとではありません。ただ、文化財に手を入れることは簡単ではなく、スプリンクラーなど防火設備の設置に悩む施設も少なくないのが実態です。一方、19年4月に改正文化財保護法が施行され、文化財を観光資源として積極的に活用しようという動きが強まっています。文化財の防火対策はどうあるべきか。最悪の事態を招かないよう、建築界がリードして議論を深めていく必要があるでしょう。

<特集 目次>

首里城炎上の教訓
正殿含む7棟の焼失があぶり出した課題

 火災現場の実態
猛烈な輻射熱が消防隊を襲う

 再建への教訓
焦点は復元と防災の両立

 歴史を守る防火設備
感知器を使い分けて早期覚知へ

 文化庁の動き
5カ年計画で国宝の防火対策を加速