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 改正民法が2020年4月1日に施行され、契約ルールなどが変わりました。約120年ぶりの抜本的な改正となります。日経アーキテクチュア20年4月9日号では、特集「改正民法で契約が変わる」を組み、建築実務への影響が大きい改正内容を徹底解説。建築実務に精通する弁護士に法改正が及ぼす影響を聞くとともに、アンケート調査を基に主要な設計事務所や建設会社などの対応状況などをまとめています。

(背景の資料:四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款調査研究会)
(背景の資料:四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款調査研究会)
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 多数に及ぶ改正条項には、建築施工の契約に一般的に用いられる「請負契約」に関するルールが含まれています。最大のポイントは、従来「瑕疵(かし)担保責任」と呼ばれてきた責任の在り方で、改正民法では「契約不適合責任」という言葉に置き換わりました。契約不適合責任は、債務不履行責任の一種として位置付けられています。

 これに伴い、引き渡し後の紛争解決フローも変化します。従来、発注者には「契約解除」「損害賠償請求」の権利がありましたが、新たに「追完請求」「代金減額請求」も可能となります。成果物の不十分な部分を是正する(追完)よう求めることと、それで解決できない場合に代金減額を求められるという権利です。契約解除についても、旧民法では受注者の「責めに帰す事由(帰責性)」がある場合に限られましたが、改正民法ではこの要件が外されたため、容易になります。

請負・売買における契約不適合の解決フロー
請負・売買における契約不適合の解決フロー
契約不適合の判明を基点とした解決フローの例。契約不適合が是正できなかった場合は代金減額で解決する、建物完成後でも契約解除はできる、損害賠償請求には受注者が帰責性を抗弁できる、などが改正点だ(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 加えて、発注者が権利を行使できる期間が変わりました。旧民法では、瑕疵を知った日から1年以内に損害賠償請求などを行う必要があったものの、契約不適合責任では同じく知った日から1年以内に“通知”を行えばよいこととしています。発注者側に有利な改正となっています。

 日経アーキテクチュアが主要な設計事務所、建設会社、不動産会社などを対象に実施したアンケート調査では、回答を寄せた22社の4割強に当たる10社が「トラブルが増える」と予測しています。設計事務所からは「施工会社の担当者によっては、契約通り(設計図通り)に施工を行っておけば、何か問題が発生しても自らの責任は追及されないと考える可能性がある。設計の不整合や設計ミスへの風当たりは今まで以上に強くなる恐れがある」との懸念の声も上がりました。

 建築界の商慣習が一変する可能性を秘めた民法改正。「知らなかった」では済まされません。契約や仕事の進め方を点検し、トラブルに備えることが重要でしょう。

 なお、今号の「建築訴訟『ここが知りたい』」でも、契約トラブルを扱っています。「積算ミスの損害賠償で『覚書』」と題し、20年3月12日号のニュース時事で報じた「田沢湖クニマス未来館」を巡る訴訟を、TMI総合法律事務所の富田裕弁護士に解説してもらいました。公共建築物の新築事業を巡り、設計者が自治体に訴えられ、判決で実施設計料の2倍に相当する額の支払いを命じられた訴訟です。