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 2016年4月に発生した熊本地震から4年。今も被災地では再建に向けて数多くの難題が立ちはだかっています。日経アーキテクチュア2020年4月23日号の特集では、復興の現場を追いかけました。タイトルは「免震ダンパー供給途絶の波紋」です。

(写真:右ページ上は日経アーキテクチュア、下は宇土市)
(写真:右ページ上は日経アーキテクチュア、下は宇土市)
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 震度7を観測した熊本地震の本震では、熊本県の宇土市庁舎が倒壊寸前となり、人々に衝撃を与えました。その宇土市は庁舎再建に向けて実施設計を完了し、4月上旬に免震構造を採用した新庁舎建設工事の入札を予定していましたが、想定外の事態が起こり、設計変更を余儀なくされています。免震オイルダンパーを製造する日立オートモティブシステムズ(以下、日立AWS)が事業撤退を決めたことで、調達先がなくなってしまったのです。

 国内で免震用オイルダンパーを製造している主要メーカーは3社。KYBと川金ホールディングス(HD)は、18年10月に発覚した免震偽装問題の対応を優先しており、新規受注をストップしている状況です。再開のめどは立っておらず、日立AWSの撤退により、一時的に国内では免震オイルダンパーの調達が困難な事態になっています。

(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 日立AWSが事業撤退を決めた背景には、免震建物の需要の伸び悩みがあります。同社によると、18年6月ごろから事業撤退を検討していましたが、免震偽装問題の発覚を受けて、同社に問い合わせが殺到し、19年1月に事業継続をいったん決めました。しかし、「受注額が想定の半分以下で事業継続が困難だと判断し、20年1月に撤退を決めた」と説明します。

 地震後の事業継続に効果を発揮する免震建物ですが、その普及はまだ十分とは言えません。日本免震構造協会によると、免震建物の計画棟数は年平均で160棟ほど。ここ数年、計画棟数の減少傾向が続いています。日立AWSの事業撤退は、さらなる“免震離れ”を招きかねません。免震技術をいかに発展させ、次代に引き継いでいくか、建築界は重い課題を突き付けられています。

(資料:日本免震構造協会)
(資料:日本免震構造協会)
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 特集では免震建物を巡る問題の他、被災マンションの解体や液状化対策など、熊本地震のその後を追いかけました。熊本地震後にまとめられた各種ガイドラインも解説しています。

<特集 目次>

Special Feature 特集
免震ダンパー供給途絶の波紋
熊本地震4年、復興に立ちはだかる難題

日立AMS事業撤退で混乱
 調達先がない状況に陥る

被災地の苦悩
住宅復興を阻む「合意形成」
 マンション解体の険しい現実
 ようやく動き出した液状化防止策

復興が進む熊本の今
 地震惨禍から日常への道程

巨大地震に備える
被害をリアルに想定し対策急げ
 レジリエンス性能とBCP指標
 非構造部材の耐震診断指針
 エレベーターの閉じ込め対策
 大地震後も機能継続