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 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は「導入」から「活用」へ――。日本の「BIM元年」と言われる 2009 年から 10 年以上たち、次のステージへと移りつつあります。日経アーキテクチュア20年5月14日号では、特集「BIM再入門」を組みました。国土交通省が20年3月にまとめた「BIM活用ガイドライン」を解説。大型プロジェクトから小規模な物件まで、特性に応じてBIMを有効活用した事例を追いかけました。

(資料:安井建築設計事務所、大林組、戸田建設、アイスクウェアド、山下設計、竹中工務店、AIS総合設計、石橋徳川建築設計所、写真:藤井 浩司、河田 弘樹)
(資料:安井建築設計事務所、大林組、戸田建設、アイスクウェアド、山下設計、竹中工務店、AIS総合設計、石橋徳川建築設計所、写真:藤井 浩司、河田 弘樹)
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 BIM活用のメリットは建築界で広く認識されてきたものの、多くのプロジェクトでは設計や施工の各段階だけでの限定的な活用にとどまっています。要因の1つには、建築生産プロセスに多様な事業者が関わる業界構造があります。設計から施工、維持管理まで一貫活用するにはデータの引き継ぎが欠かせませんが、業界内に統一ルールがないことが普及の妨げとなってきました。

 こうした現状を打開するために作成されたのが、国交省のガイドラインです。官民の議論を踏まえてまとめられたもので、BIMを一貫活用するための標準ワークフローやBIMデータの引き継ぎルールを整理しました。一貫活用のカギを握るのが、「ライフサイクルコンサルティング」と呼ぶ新しい業務。企画段階から建物完成後の維持管理を見据えて、モデリングや入力ルールを設定するのが役割です。いわば、BIMデータのつなぎ役とも言える仕事です。

(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 組織や制度の壁に阻まれていたBIM活用ですが、壁を崩す取り組みは既に始まっています。特集では事例の1つとして、ライフサイクルコンサルティングの先駆けとして注目を浴びる京都府八幡市の新庁舎建設プロジェクトを取り上げました。市は効率的な庁舎の維持管理を行うため、BIMを活用したFM(ファシリティー・マネジメント)システムの構築を進めています。実施設計・施工は奥村組・山下設計JV、FMシステム構築は日建設計が担当しています。市は将来、他の施設にも水平展開することを視野に入れています。

 BIM活用の動きは急加速しそうです。新型コロナウイルス感染症に関する緊急経済対策の裏付けとなる20年度補正予算で、国交省は「インフラ・物流分野などにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた抜本的な生産性の向上」に国費約177億円を計上しました。柱として掲げたのが、建設生産プロセスなどの全面的なデジタル化です。23年度までに小規模なものを除く全ての直轄工事で原則としてBIM/CIMを活用。BIM/CIMの活用を通じて収集されたビッグデータを使って、先端技術の実証や開発などに生かしていくことも打ち出しています。

 国の旗振りによる建設生産のデジタル化の取り組みは、民間建築の分野にも波及しそうです。国交省は20年4月23日、「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」の提案募集を始めました。設計、施工、維持管理のプロセスを横断してBIMを活用する民間建築プロジェクトを対象に、生産性向上の効果検証や課題分析をするための経費を上限5000万円で補助するもので、20年6月1日まで提案を受け付けています。

 企画から維持管理段階まで一気通貫するBIMは、ビジネスの在り方や働き方を変える可能性を秘めています。デジタルを武器にできるか否か、コロナ禍の後を見据えてBIM活用の波に備えることが欠かせません。

<特集 目次>

BIM再入門
ワンモデルから部分使いまで目的重視で選択

 動向●国交省のガイドライン固まる
BIMデータのつなぎ役に脚光

 データを使い倒す 設計と施工の枠を超える
前例なき球場をワンモデルで実現
超高層の“難所”だけにBIM投入
構造・施工との連携でカテナリーの屋根
データ連携のカギはコミュニケーション

 中小事務所の活用法 機動力を生かし、川上を効率化
数量確認が多い公共建築に活路
“ソフトBIM”で受注につなぐ

 維持管理につなげる設計情報こそ運用の要
設計BIMを育ててFMに反映
ライフサイクルコンサルの先駆け

 展望●BIM活用のこれから
“一気通貫時代”に備える