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 皆さんは、大規模な木造建築物の架構に目を奪われた経験はありませんか?公共建築物等木材利用促進法が施行されてから約10年。その間、木造に関する技術開発や規制緩和が進み、コスト的にも競争力が付いてきて、中大規模木造が全国で急速な広がりを見せています。中高層木造も実現する時代、建築実務者のアイデアがますます期待される分野となっています。

 日経アーキテクチュア2020年7月9日号の特集は「構造で見せる木造大空間」です。中大規模木造については18年から毎年1回、特集を掲載しており、3回目となる今回は「構造」に着目して最新の事例を紹介しました。

(写真:安川 千秋、住友林業)
(写真:安川 千秋、住友林業)
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 特集の前書きを引用します。

 「中大規模木造の構造表現がより自由になってきている。例えば、発展途上のCLT(直交集成板)をどう活用していくか、その答えが見えてきた。屋根架構だけ載せる、軸組み工法と組み合わせるといったように、ハイブリッドが基本だ。その際、長さ10m超の原板をそのまま耐力壁にするなど、大判遣いが有効だ。この他、LVL(単板積層材)の耐力壁を見せながら無柱空間を生むなど、設計の幅は広がっている」

 中大規模木造を増やしていくうえでのポイントの1つが、大スパンへの対応です。特集で紹介した「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」(東京都江東区)は、アトリウムを覆うCLTの格子架構が特徴です。最大スパンは約56m。日本の大規模木造の1つである東大寺大仏殿の幅とほぼ同じです。

 「大判のCLTは、剛性の高い大断面の梁として使える。部材の面内剛性が高いから、部材同士も剛に近い接合強度でつなぐことができ、大スパンの架構が可能になる」。設計を手掛けたマウントフジアーキテクツスタジオ共同主宰の原田真宏氏は、CLTの大架構を着想した背景について、こう語ります。

 「長門市本庁舎」(山口県長門市)は、5階建ての大規模木造で、使い勝手のよいスパン割りにするため、耐火集成材による柱・梁のスリム化を図りました。免震化や混構造、合成梁といった技術を駆使して、従来の一般的な鉄筋コンクリート造の庁舎と同じ6.4m×12mのスパンを実現しています。

 中大規模木造の増加に伴い、木造の設計・施工技術は大きく変化しています。多くの実務者にとって、これまで蓄積してきたノウハウの延長線上でつくれるわけではないようです。プランと構造の関係、部材の選び方、接合部の考え方などに対する戸惑いの声も少なからず聞こえてきます。今回の特集では、各事例に「構造の仕組み」「ディテールから解く架構」の囲みの欄を設け、分かりやすく解説しました。「できそう」「やってみたい」と思わせる実務のヒントが満載です。

<特集 目次>

構造で見せる木造大空間
大判遣いのCLTなどとのハイブリッドで新たな道筋

CLTの使い方を極める
最大3m×12mの製作サイズを生かす

大空間をつくる仕掛け
耐力壁を巧みに配置、柱や梁をすっきりと

解説 「構造」との向き合い方
自分なりの“鉄則”をさらに磨く