新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、オフィスの新しい在り方を模索する動きが広がっています。テレワークが普及し、働く人の意識は大きく変わりました。どうすれば安全を保ちながら、効率的に仕事ができるのか。日経アーキテクチュア2020年7月23日号の特集「オフィス・ニューノーマル」では、コロナ禍で加速するオフィス変革の最前線を追いかけました。
こんなに面積が必要なのか、これからどんな使い方をすればよいのか。テレワークの浸透で人がまばらになったオフィスに対し、多くの企業が疑問を持ち始めました。政府による緊急事態宣言の発令以降、オフィスの撤廃や縮小の動きが相次ぎ、一部では「オフィス不要論」もささやかれ始めています。東京都心部では今後数年で、空室率が10%に跳ね上がるとの試算も出てきました。こうした動きを見据えて、オフィス縮小コンサルティングを手掛ける企業も登場しています。
一方で、テレワークのメリットとデメリットも見えてきました。内閣府が緊急事態宣言解除後の5月から6月にかけて約1万人を対象にインターネット上で実施した調査によると、テレワークを経験した人は全国で34.6%。うち8割以上が継続を希望しています。一方で、テレワークで仕事の効率が上がったとの回答は全体の9.7%にとどまり、低下したと回答した47.7%を大きく下回りました。
テレワークの不便な点として、回答者の多くが挙げたのは「社内での気軽な相談・報告」「取引先などとのやり取り」でした。一連の調査結果からは、全ての業務をテレワークで完結する難しさが見えてきます。
こうした状況下で、多くの企業が模索しているのは「安全」と「多様な働き方」の両立です。特集では、コロナ禍で始まったオフィスリノベーションの実例を複数取り上げています。ソーシャル・ディスタンスを“見える化”するステッカー、鏡に向かって机を横一列に並べた会議室――といったアイデアは参考になるでしょう。また、密集警告や非接触、抗ウイルス化といった、感染リスクを抑える「オフィステック」の最新動向も解説しています。
これまでのオフィス設計は多数の人が同じ空間に集まることを前提として、進化を続けてきました。では、ウィズコロナ、アフターコロナ時代のオフィスの役割と価値は何か。変革期において、クライアントに寄り添いながら、新たなオフィス像を実際の空間に落とし込む力が建築実務者に求められています。
オフィス・ニューノーマル
新型コロナが問い直した価値
ゲームチェンジの号砲
さよならオフィス、空室率10%時代の到来
新たなニーズで新サービス 「オフィス縮小コンサル」も登場
ニューノーマル事例
始まったオフィスリノベーション
- case1 中国1万社から見えたルール、低コストで距離を見える化
- case2 鏡に向かって並ぶ会議室も、3密なくして出社を推奨
- case3 業務に応じて場所を使い分ける、ソファや窓側席も執務席に
- case4 旅館をオフィスにリノベ、転用ニーズを取り込め
感染リスクを抑える技術
勃興する「オフィステック」
- 密集警告 位置情報や映像解析で“密”を検出
- マスク顔認証+検温 発熱した人を入り口ゲートでブロック
- 非接触エレベーター 乗り場やかご内でボタンに触れない
- 抗菌コーティング オフィスを丸ごと抗ウイルス化
アフターコロナの働き方
オフィスが街に溶け出す