全1402文字
PR

 日経アーキテクチュア2020年10月22日号は、毎年恒例の学校特集号。今回のタイトルは「育てるキャンパス」。副題は「10年先を見据えた設計で、自分なりのマスタープランを描く」です。

(写真:生田 将人、母倉 知樹、日経アーキテクチュア)
(写真:生田 将人、母倉 知樹、日経アーキテクチュア)

 特集の前書きを引用します。

 「大学の都心回帰が進むなか、郊外立地でも学生数を大きく伸ばした学校がある。設計者の安藤忠雄氏は、10年以上をかけて5つの施設で大学側の思いを具現化してきた。旧短大の既存校舎も活用し、大学の成長に合わせて1棟ずつ整備したものだ。最近は、学生ニーズの幅は広がり、新型コロナウイルスなどへの対応も欠かせない。キャンパスや学びやをどう育てていくか。将来像を先読みした設計が求められている」

 特集で紹介した事例の1つが、IPU・環太平洋大学(岡山市)です。10年以上かけて、安藤忠雄氏の設計による施設を順次、建て増してキャンパスを拡張し、統一感のあるキャンパス整備を進めてきました。安藤氏は、「大学には、最初から大きなキャンパスを一気につくらない方がよいという話をした。全体として学生を育てるべき環境となるように、将来を見定めて1棟ずつ建てていくのがいいと思った」と語ります。

 キャンパス計画の集大成と、現時点で位置づけるのが19年に完成した「DISCOVERY」。水盤の上に施設を浮かべたようなデザインと大きな庇が印象的な施設です。この建物には一般的な教室はありません。ラーニングラボ、ディスカッションラボといった、学生たちが自ら考え、能動的に授業を展開する場を備えています。

2019年に竣工した最新の校舎である「DISCOVERY」。ガラスのファサードが映り込む水盤を抜けてアプローチする。建物は鉄骨造の2階建て(写真:生田 将人)
2019年に竣工した最新の校舎である「DISCOVERY」。ガラスのファサードが映り込む水盤を抜けてアプローチする。建物は鉄骨造の2階建て(写真:生田 将人)
[画像のクリックで拡大表示]
1階のディスカッションラボ。各席に机のない英国議会をモチーフにしたレイアウトで学生同士の白熱した議論を促す。計60席(写真:生田 将人)
1階のディスカッションラボ。各席に机のない英国議会をモチーフにしたレイアウトで学生同士の白熱した議論を促す。計60席(写真:生田 将人)
[画像のクリックで拡大表示]

 キャンパスは岡山市の中心部から北東に12kmほど離れた田園風景の中にあります。07年の開学時に約300人だった学生数は、20年には3000人超と約10倍に。同大学の大橋節子学長は、「学生数が着実に伸びてきた要因として、キャンパスデザインが非常に大きな力になっていることを実感しています」と話しています。キャンパスの魅力が、多くの学生を引きつけた好例といえるでしょう。

 コロナ禍では多くの大学でオンライン授業の実施を迫られ、大学キャンパスからは学生の姿が消えました。ウィズコロナ、アフターコロナの学びの場はどうあるべきか、いま大学キャンパスの存在意義が問われています。特集では、専門家へのインタビューなどを基に大学キャンパスの近未来像も探っています。事例と併せて、ご一読ください。

<特集 目次>

育てるキャンパス
10年先を見据えた設計で 自分なりのマスタープランを描く