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 日経アーキテクチュア2020年11月12日号の特集は「法令違反の代償」。昨今、世間を騒がせた建築界の不祥事にフォーカスしました。

(写真:日経アーキテクチュア、佐々木 太、池谷 和浩)
(写真:日経アーキテクチュア、佐々木 太、池谷 和浩)
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 最初の事例では「コンプラなき建築界」と題して、東京都目黒区内の商業施設を巡る確認済み証偽造事件のその後を追いかけました。19年8月21日号のニュースクローズアップ「確認済み証偽造で開業延期」の続報です。

 記事冒頭の一文を引用します。

 「『ようやく完成して、ひと安心だ』。街づくり事業などを手掛ける東証2部上場企業、ピーエイの加藤博敏社長は、ほっと胸をなで下ろすと同時に、激しい怒りを覚えていた。『必ず報いは受けさせる』と──」

 事件の舞台となったのは、20年11月6日に開業した「クラフトビレッジ西小山」。コンテナを利用した建物とオープンテラス、中庭が特徴の開放的な商業施設です。設計者による確認済み証偽造が、完成間近の19年7月に判明。是正措置などに時間を費やし、開業が1年以上遅れる事態となりました。ピーエイが被った損害額は2億円超。開業遅延でテナントとして入居予定だった2社からも訴えられました。当然、発注者の怒りは収まりません。

 確認済み証を偽造した設計者は、元請けを構造設計事務所とする形で意匠設計業務を受託。先行取得した事務所棟の確認済み証をスキャンし、確認番号や日付、建築計画概要をデザインソフト「イラストレーター」で改ざんしていました。ピーエイは商業棟の確認済み証が偽造されたものと気付かずに、建設会社に工事を発注してしまったのです。ピーエイは設計者を刑事告訴するとともに、民事訴訟も提起しています。

 設計者は「建築士」と名乗っていましたが、実は無資格者でした。この設計者に取材を申し込んだところ、驚きの展開が待っていました。なんと記者を新たなクライアントの現場に呼び出したのです。自らが代表を務める会社は社名を変えて業務を継続していました。詳しくは日経アーキテクチュアを読んでいただきたいのですが、設計者の開き直りとも取れる弁明にはあぜんとするしかありません。

 確認済み証の偽造は近年、全国で度々発生し問題となっています。こうした不正行為を放置することは、建築確認制度に対する信頼を揺るがすとともに、建築界のイメージ悪化につながります。適切な防止策を講じていくことに加え、業界を挙げたコンプライアンス(法令順守)啓発活動を進めていくことが欠かせないでしょう。

(写真:日経アーキテクチュア、池谷 和浩、資料:大和ハウス工業)
(写真:日経アーキテクチュア、池谷 和浩、資料:大和ハウス工業)
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 特集ではこの他、マンション杭未達問題、レオパレス問題などのその後も追いかけました。法令違反をいかに防いでいくか、コンプライアンス問題を考える題材にしてもらえたらと思います。