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 「住宅の脱炭素化がなければ、カーボンニュートラルはあり得ない。主役はもちろん住宅業界です」「様々な義務化の話も出てくるでしょう。逃げずに位置付けなければならないと思っています」。小泉進次郎環境相は、日経アーキテクチュアのインタビューに応じ、こう語りました。

(資料:帝国データバンク、取材を基に日経アーキテクチュアが作成、写真:積水ハウス、的野 弘路)
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(写真:的野 弘路)
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 日経アーキテクチュア2021年3月25日号では、住宅特集「脱炭素住宅」を組みました。冒頭に掲載したインタビュー記事では、小泉環境相が住宅の脱炭素化に懸ける思いを激白しています。住宅の環境規制の在り方に踏み込んだ姿勢を示した上で、「住宅や住宅業界にもリデザインを期待している」と述べ、住宅業界に意識変革と覚悟を迫っています。

 温暖化ガスの排出量を50年までに実質ゼロとする──。菅義偉首相の所信表明演説における「2050年カーボンニュートラル宣言」を機に、日本の脱炭素社会実現へ向けた取り組みが急加速しています。住宅分野も例外ではありません。政府が政策メニューを総点検するなか、国土交通省と環境省、経済産業省の3省は省エネ基準適合義務化に向けた具体的な検討を始めました。

 21年4月には改正建築物省エネ法に基づく説明義務制度が始まります。そうしたなか、急浮上した規制強化。説明義務化が始まった途端に、今度は適合義務化か──。住宅設計者からこんな声が聞こえてきそうですが、適合義務化はまだ入り口。より踏み込んだ規制も避けられない情勢です。それほど、2050年カーボンニュートラルの目標は高く険しいといえるでしょう。

 目標達成には、18年比で住宅全戸平均40%のエネルギー削減が必要です。小泉環境相はインタビューで「『何年以降は事実上ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)が義務』という状態になるでしょう。言い換えれば、これからは『住宅に太陽光発電パネルの設置が必須になる』ということです」と述べています。仮に新築を全てZEHとしても目標に届かないという見方もあります。既存住宅ストックの相当数の省エネ改修が不可欠ですが、様々な課題が立ちはだかっています。

 今後、脱炭素化に向けた新制度が矢継ぎ早に投入されるとみられます。住宅設計者は引き続き政策の先行きを注視し、備えておく必要があるでしょう。特集では、海外の環境規制の最新動向や国内の大手住宅会社の取り組み、技術開発の動向なども併せて掲載しています。脱炭素社会で住宅、ひいては住宅産業がどのように変わっていくのか、ヒントになると思います。ぜひご一読ください。

<住宅特集 目次>

脱炭素住宅
省エネ基準適合義務化の議論が再燃

緊急インタビュー 小泉進次郎環境大臣
住宅なくして脱炭素なし

住宅政策が激変
「新築ZEH義務」でも目標未達か

 施行直前におさらい
 説明義務化に備えトラブル防ぐ

企業動向
次は集合住宅ZEHと再エネ活用

海外最新動向
「義務化」広がる世界の環境規制

 世界で注目の環境住宅
 戸建てからプレハブまで細部にこだわりエコ実現

注目の環境技術
盛り上がる低炭素技術開発

専門家に聞く
「脱炭素住宅」実現への道筋