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 主要な建築材料の1つであるコンクリートが、驚くべき進化を遂げつつあります。日経アーキテクチュア2021年4月22日号では、特集「コンクリート超進化」を掲載しました。

(写真・資料:船戸 俊一、清水建設、大成建設、大林組、PERI、東京大学、日経アーキテクチュア)
(写真・資料:船戸 俊一、清水建設、大成建設、大林組、PERI、東京大学、日経アーキテクチュア)
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 特集の前書きを引用します。

 「DX(デジタルトランスフォーメーション)や脱炭素がコンクリートを大きく変えようとしている。3Dプリンターをはじめとするデジタル技術が、これまでの『限界』を打ち破りつつある。脱炭素への対応では、製造過程で排出する二酸化炭素(CO2)を減らすだけでなく、排出したCO2をコンクリートに固定してカーボンマイナスを目指す研究も活発だ。次代を拓く新素材開発で『超進化』を遂げるコンクリートの最前線をリポートする」

(写真・資料:PERI、MENSE KORTE ingenieure + architekten)
(写真・資料:PERI、MENSE KORTE ingenieure + architekten)
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 特集では冒頭、3Dプリンター活用の事例を取り上げました。ドイツの建設会社、PERI(ペリー)は同国初となる3Dプリンターを活用した住宅を建設。2階建ての住宅をわずか8日で「印刷」しました。材料に水セメント比を調整した「i.tech3D」と呼ぶコンクリートを使用。層が積み重なっても崩れないようにすることで、高速施工を実現しています。

 日本国内でも同様の取り組みが進んでいます。例えば清水建設は3Dプリンター用に独自開発した繊維補強モルタル「LACTM(Laminatable Cementーbased Tough Material)」を実用化。同社が開発・設計・施工する「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」で新技術を導入しました。技術研究所内に新設した「コンクリートDXラボ」にある3Dプリンターで埋設型枠を製作。現場に搬入して、複雑な形状の柱を短期間で構築しました。

 建設分野の3Dプリンター研究の第一人者である石田哲也・東京大学大学院教授は日経アーキテクチュアの取材に、「3Dプリンターを活用することで得られるメリットは、デザイン性の向上や軽量化、省資源化など様々だ。従来工法では実現できない形を造形できるようになり、生産性の向上や省人化にもつながる」と話します。技術の実用化には、建設材料からのアプローチが欠かせなくなっています。

(写真・資料:船戸俊一、會澤高圧コンクリート)
(写真・資料:船戸俊一、會澤高圧コンクリート)
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 3Dプリンターの他にも、コンクリートの技術開発の世界では近年、新しいムーブメントが次々に生まれています。自己治癒コンクリートなど脱炭素に関連する技術がその代表例でしょう。特集では、先端技術を次々に導入して注目を集める會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)の生産現場をリポートしています。想像以上に技術開発が進んでいることに驚かされる人もきっと多いと思います。

 設計、施工などの現場で、コンクリートの可能性をいかに引き出していくか。建築実務におけるヒントがちりばめられた特集です。ぜひご一読ください。

<特集 目次>

コンクリート超進化
DXと脱炭素で加速、次代を拓く新素材開発

デジタル1 PERI
ドイツで進む3Dプリンター活用 2階建て住宅を8日で「印刷」

デジタル2 清水建設
3Dプリントで曲面柱を実現 独自開発のモルタルで強度確保

識者に聞く 東京大学・石田哲也教授
試験方法ルール化が普及を後押し

デジタル3 大林組、エム・ソフト
残り打設数量を素早く計測 AR技術を用いてアプリ開発

デジタル4 清水建設・穂積建設工業・石上建設JV
凹凸をレーザー測量で可視化 不陸±2㎜以内の床面に挑む

企業研究 會澤高圧コンクリート
自己治癒や3Dプリンターなど先端技術に取り組む工場へ

脱炭素1 東京大学、北海道大学など
CO2と廃コンクリートで新素材 ムーンショット型研究開発が始動

脱炭素2 三菱商事
グリーンコンクリート構想に向け CO2を固定する技術に投資

脱炭素3 鹿島
「CO2-SUICOM」の要素技術で 現場打設での炭酸化を目指す

脱炭素4 大成建設
コンクリートにCO2を固定 カーボンマイナスを実現へ

脱炭素5 大林組
低炭素コンクリートを地上にも クリア塗料で中性化を抑制

脱炭素6 竹中工務店
低CO2セメントの白さ生かし着色

脱炭素7 長谷工コーポレーション
工場が扱いやすい調合で普及目指す

脱炭素8 太平洋セメント
工場から出るCO2を回収しセメント原料や建設資材に活用

技術基準が変わる
低炭素や資源循環の等級新設 建築学会JASS5改定のポイント