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 台風や豪雨による大規模水害が毎年のように起こるなか、水害対策はいまや耐震や防耐火に並ぶ、家づくりの最重要テーマになっています。日経アーキテクチュア2021年6月10日号は、住宅特集「逃げ込める家」を組みました。豪雨水害やライフラインの停止にいかに備えるか、災害時に在宅避難できる家には何が必要か。住宅防災の最前線を追いかけました。

(写真:日経クロステック)
(写真:日経クロステック)
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 特集の前半では「豪雨水害に備える」と題し、工務店や設計事務所などの設計事例を複数紹介しています。例えば長野市の地場工務店であるミツヤジーホームは、開口部の水密性を高めた「浸水しない家」を信州大学と共同開発し、実用化しました。水深3mの洪水に耐えるのが売り。19年10月の台風19号で市内の住宅が深刻な浸水被害に遭ったのをきっかけに開発しました。

 浸水後に「洗える家」も登場しています。一般社団法人埼玉いえ・まち再生会議(さいたま市)が開発したもので、床上浸水で建物内部に侵入した汚水や泥を洗い流せる工夫を施しました。壁の中まで洗えるのが最大のポイントで、建て主だけで応急対応できます。カビ対策として、洗浄後に素早く乾燥させる仕組みも備えています。発災時の備えだけでなく、復旧を見据えた家づくりの視点は今後欠かせないものになるでしょう。

 ハウスメーカー各社は競って、豪雨水害への対策を打ち出しています。20年10月に「水に浮かぶ家」の実大実験を公開して話題になった一条工務店は、耐水害住宅の販売開始から8カ月間に全国で約800棟の受注を得ました。水害対策への消費者の関心は確実に高まっています。

 21年4月には、街全体で水害を防ぐための流域治水関連法が国会で成立。「浸水被害防止区域」に指定された場所では許可なく住宅の建設ができなくなります。こうした法制度の整備も、耐水害住宅の普及の後押しとなりそうです。

 一方で、水害対策の技術はまだ研究途上の段階といえるでしょう。特集では、戸建て住宅の浸水対策の費用対効果を検証した建築研究所の報告書の内容も解説しています。建築実務者がこれからの家づくりに向け、どのような対策が必要か。実務におけるヒントになると思います。

 特集の後半では「ライフライン停止に備える」と題し、災害時に暮らしを継続できる工夫を凝らした住宅をリポートしました。停電・断水時に庭へ避難する家、クルマと家をつないで給電する家などを取り上げています。こちらも併せてご覧ください。