輸入木材価格が半年で1.5倍になり、つられて国産材も急騰──。木材の需給逼迫による「ウッドショック」に、住宅業界が悲鳴を上げています。日経アーキテクチュア2021年6月24日号では、緊急特集「急襲! ウッドショック」を組みました。家づくりの現場では木材が足りず、工事を一時中断するケースも出ています。大混乱に陥る現場をリポートするとともに、木材業界のキーパーソンに取材して今後の見通しを聞きました。
ウッドショックは、米中の旺盛な木材需要、世界的なコンテナ不足といった複数の要因が絡み合って起こったと言われています。世界各国が木材を奪い合うなかで、日本が木材を買い負けている状況です。加えて、仮需要が発生しているとの見方もあります。新型コロナウイルス感染拡大の初期にあったマスク不足のように、品不足への危機感が価格をさらに押し上げているというのです。
木材価格の高騰はしばらく続きそうです。本誌が取材した複数の木材業界のキーパーソンは、「7月以降も値上がりする」「9月の価格は6月の2倍弱になる」「長期的に価格は高止まりする」といった見通しを示しました。木材価格の高騰は1992~93年、2006年にもありましたが、いずれも供給側が発端。今回のウッドショックは需要側が発端で価格上昇のメカニズムが違うため、先行きの見立てを難しくしています。
ウッドショックは、住宅に関わる企業の業績を直撃しています。コロナショックで落ち込んだ住宅着工がようやく回復してきた矢先に、水を差された格好です。日本総合研究所は21年6月、21年4~9月の新設住宅着工戸数が前年の同時期に比べて5万7000戸減るとの試算を発表しています。
住宅業界では、樹種を国産材に変更するなど対応を始めていますが、限界があります。国産材の生産能力が足りない、国産材の性能では代替できないといった問題があるためです。こうしたなか、一部の大手住宅メーカーが1戸当たり数十万円の値上げに踏み切る動きも出てきました。調達力の弱い工務店は影響が深刻で、「プレカット難民」という言葉も聞かれます。工期を確定できない、請負金額を確定できないといった理由で、見込み客と契約できない事態が発生しています。
「ウッドショックは遅延の正当事由になるか?」「勝手に樹種を変えてもいい?」「請負代金の増額はどう打診する?」「木材の仕入れをどこまで前倒しすべきか?」──特集では当面の対策として、住宅産業に詳しい秋野卓生弁護士に契約を巡る問題について解説してもらいました。秋野弁護士は、建て主などとの紛争をなるべく回避する努力が、設計者や施工者に求められていると説きます。
ウッドショックの問題は、住宅産業のサプライチェーンが抱える弱点を浮き彫りにしました。こうした事態に振り回されないためにも、国産材も含め、木材の安定的な流通・生産体制を再構築することが建築界の急務となっています。今回の「ショック」を「チャンス」に転換できるか。川上から川下までを巻き込んだ取り組みが求められています。