全1112文字
PR

 国立競技場の設計を手掛けるなど、今や一般でも知らない人はいないと言っても過言ではない建築家の隈研吾氏。なぜひっきりなしに仕事の依頼が舞い込むのか──。日経アーキテクチュア2021年7月22日号では特集「隈事務所、メガアトリエの挑戦」を組み、チームづくりに焦点を当てて快進撃の源泉に迫りました。

(写真:隈研吾建築都市設計事務所)
(写真:隈研吾建築都市設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 隈研吾建築都市設計事務所(以下、隈事務所)は1990年設立。10年前は100人に満たない事務所でしたが、いまや海外オフィスを含めて300人以上が所属する国内最大級のアトリエ設計事務所に変貌しました。外国籍の所員は約4割。2021年5月時点で進行中のプロジェクトは445件で、半数以上が海外の案件です。

 アトリエの生命線である創造力を維持しつつ、どうやって大規模化に対応していくか。隈事務所では、コロナ禍を機に設計事務所はどうあるべきかを突き詰め、さらなる成長に向けてさまざまな変革の種をまいています。

 その1つが、地域に根差した関係構築の拠点となる「サテライト」。隈事務所は、「木工の町」として知られる北海道東川町にサテライトオフィスを開設し、5人程度の所員を派遣する計画を進めています。所員の働き方の1つの選択肢として、今後も日本各地にサテライトを順次開設していく考えです。仕事の間口を広げる試みといえるでしょう。

 もう1つが、CGやグラフィック、インテリアといった領域をカバーする「専門チーム」です。隈事務所には建築のプロジェクトだけでなく、アプリ開発や内装デザイン、日用品のプロダクト開発などさまざまな依頼が日々舞い込んできます。専門チームを内製化することで、発注者の依頼に建築以外の選択肢を用意できるメリットがあります。隈事務所の新領域開拓の原動力となっています。

 この他にも、所員が担当プロジェクトをプレゼンして隈氏がレビューする「グローバルミーティング」、事務所のノウハウや哲学を伝える「用語集」、事務所が手掛けたプロジェクトの情報をデータベース化する「アーカイブ」といった基盤整備を進めています。いずれも所員のクリエーティビティーを高めるための取り組みです。

 特集のインタビューでは、隈氏にアトリエ設計事務所の組織論について聞きました。事務所の設立当初から「組織設計事務所にはしない」と公言してきた隈氏は、「隈事務所に限らず、建築設計事務所の在り方はこれから変わってくる。建築だけではなく、クリエーター集団のようになっていく」「僕をプロジェクトのための駒の1つとして使う意識を持ち、自分でプロジェクトの状況を動かせる人間が増えてくるといい」と語ります。果たしてその真意は。進化する隈事務所に、今後も目が離せません。